第21話 プール
8月X日
早川さんからプールに誘われた。夏のうちに仕上げきったこの体を見せたいとのこと。何かあるといけないから着替えは持ってきてほしいとしきりに言われたので、ジャージのボトムスとTシャツを2枚追加で持っていくことにした。
彼女だし帰りは送っていこうと思うので早川さんの最寄り駅で待ち合わせしてバスで向かうことに。時間に余裕をもって20分前に待ち合わせ場所にいくと、今まさに早川さんがチャラそうな2人組にナンパされそうになっていた。サングラスを外し後ろからそっと近づいてそれぞれの肩に手をかける。
「お姉さんひまして、ヒッ!」
「おぅ、ごめんな?その子オレの彼女」
「「すいませんしたぁー!」」
睨みつけて最近演技指導で身につけたドスの効いた声を出すと男たちは走り去っていった。
「やっほー!早かったじゃん!」
「そっちこそ。いつから待ってたの?」
「今きたとこ♡いや、マジで30秒前くらいに着いて『着いたよ』ってメッセ入れようかと思ってたら秒で朔夜きてビビったわw」
「僕はそんな秒でナンパされるのが驚きだよ...」
バス停に向け歩きながら会話する。
「あはー、一応グラドルしてますんでね。よく声かけられるよ。ナンパとかキャッチとか」
「ナンパはわかるけど、キャッチってなに?」
すると早川さんは僕の腕を抱き耳元で囁いてくる。
「エッチなお店で働きませんか?ってやつ」
「んなっ」
「ウソウソ、だいたいキャバクラだね。残りの1割が風俗とホスト」
「えぇ、、?マスクしてサングラスして帽子もかぶってるのに?」
「あーいうのって、とりあえず声かけて可愛ければキャバクラ、それ以外は風俗にまわすんじゃない?知らんけど」
「うへぇ」
朝から泥沼な妄想をしてしまった。
「それよかバス乗ろうバス!この時間なら1本前の乗れるっしょ」
「そうだね」
予定より10分以上早くバス停に着いたが余裕をもって乗ることができた。
「あのプールいったことある?スライダーあるんだよ。一緒に乗ろうね」
「いったことない、有名だよね」
のんびりバスに揺られて10分ほどでプールに到着した。
「じゃあチケットを」
「あるよチケット!事務所で配ってるのもらってきたんだ。優待券。」
「なん、だと、、」
財布を取り出してかっこよく「出すよ」って言おうと思っていたのに。さすがはグラドルの事務所、なのか?
「とりあえず中はいろー。んで、着替えたら出たとこで待ち合わせしよ」
「うん。それじゃあ、また後で」
男子更衣室にて水着に着替える。小銭入れと水中メガネをポケットに入れ、サングラスをかけて外へ出る。早川さんを待っている間チラチラ見られたのはサングラスのせいではなくいい体になってきたのだと思っておこう。
ほどなくして早川さんがやってきた。
なんと白、白のビキニである。水色のビニールバックとサングラスをかけており、僕を見つけると手を振りながら歩いてくる。
「おまたせ!」
「すごく似合ってる」
「ふふ、ありがと!」
早川さんはサングラスをあげ、髪のあたりにかけると僕の腕を抱きしめて僕の肩に頭を預けてくる。右腕がむちっとした感触に包まれて、髪からすごくいい匂いがする。
そのまま少し歩いてプールサイドのパラソルのついたテーブルに荷物を置き、さっそく泳ごうかと早川さんを見ると、サンオイルと日焼け止めを手にこちらを見ている。
「昨夜はさ、あたしに日焼けしてほしい?しないでほしい?」
「考えたこともなかった」
「選んで?どっちのあたしがいい?」
また急に悩ましい選択肢を、、。
「どっちも捨てがたいけど、、」
「捨てがたいんだ」
「日焼け止めでお願いします」
「はい、では塗るのをお願いします」
早川さんは無駄にスタイリッシュに日焼け止めを僕に渡してくると、自分はサンオイルの蓋を開けて手にオイルを出し始める。
「私はサンオイル塗ってあげるね。そのまま入る気だったでしょ。ダメだよ?ちゃんと塗っておかないと肌に悪いし、ひどい時はヤケドして水ぶくれになっちゃったりするんだから」
そう言って僕の首から胸、腹とオイルを塗っていく。たしかにそのまま入るつもりだった。優しいなぁ。
「ほら昨夜も、早く塗って?こうしてる間にも私は紫外線を浴びてるの!早く塗ってくれないと黒ギャルになっちゃうよ?」
「えっと?えっ、背中とかじゃなくて?」
とりあえず受け取った日焼け止めを手に出しつつたずねる。早川さんが腹にオイルを塗ってくれているのでめっちゃ出しずらい。すると、早川さんはニヤッと笑いながらオイルをたっぷりと手に取る。
「背中から塗りたいの?えっち〜」
そう言って僕のことを抱きしめて背中にオイルを塗りだす。
「えっ、うっそだろ、、」
「いいからほら、早くぅ♡塗って♡」
初めての対面でのハグに戸惑いつつ、抱きしめ返すように手の中の日焼け止めを早川さんの背中に塗りつけていく。
「たっぷり塗ってね、ほら、こんな感じでよーく塗りつけて?」
そう言って僕の背中をオイルのついた手で撫で回す。周りの視線が痛い。胸から腹にかけて柔らかい感触が這い回り、いい匂いに包まれておかしくなりそう。あんなことやこんなこと、全てをぐっとこらえて早川さんの背中に日焼け止めを塗る。
「水着の跡ができないように紐の内側もおねがーい」
ええい、ままよ!無心になって背中を塗りきると、早川さんの指示に従い肩・腕・お腹とくまなく日焼け止めを塗っていく。
「後は首と、ここね」
そう言って早川さんは両腕で挟むように胸を寄せる。周りを見回しながらまずは首と鎖骨に日焼け止めを塗り込む。鎖骨、綺麗だな。
「ほぉら、誰も見てないよ?ここも塗って?」
胸にいけなくてずっと鎖骨を撫でていると、耳元で囁かれる。
意を決して脇のほうから肩の前面、見えている上の部分に塗っていく、うぉ。柔らかい。
「間も塗ってほしいなぁ?」
「えいっ」
「あっ」
早川さんが肘から手首の間の部分を使い僕の手を押しつぶすように胸を挟み込む。圧が!圧がすごい!思わず指先が動き、水着のカップの中を泳ぐ。指先を掠めた感触に輪郭を思い浮かべ赤面する。
「お、おわった、、」
「まだよ。ほらここにそって、そう」
もうどうにでもなれと早川さんが示すままにトップスの輪郭、ボトムスのラインに沿って腰やお尻、太ももの付け根と塗っていく。
そして太ももに丁寧に塗り込むと、早川さんは椅子に座り緩く足を組むと片足をこちらに向けてくる。そして初めて見る挑発的な表情で告げる。
「ほら、跪いて?塗って♡」
僕は跪いて立てた膝に早川さんの足を乗せると、早川さんを見上げながらふくらはぎを揉むように日焼け止めを塗っていく。
「かかとも、そう。爪先も。指の一本一本丁寧に、朔夜君すっごく切なそうな顔してる♡かわい〜♡」
早川さんはぐっとかがみ込んで僕の顔を覗き込んでくる。恥ずかしくて顔を伏せ早川さんの足に集中していると、耳元で囁かれる。なんかゾクゾクしてくる。初めての感覚に戸惑いをおぼえる。
しっかり爪先まで塗り切ると反対側の足を差し出される。なぜか耳元で「好き♡好きだよ朔夜君♡キミのそんなところご大好き♡」などと愛を囁かれながら反対側の爪先まで塗り切って早川さんを見上げると、早川さんは非常に満たされた表情をしていた。
早川さんてもしかしてSなのかなぁ。
まさかこんな形で彼女の体をくまなく触ることになるとは。初めてはもっと普通な感じがよかった。
デリケートゾーンには触れていないが、胸にも触れてしまったしボトムスのふちに手を入れて日焼け止めを塗るのはドキドキした。
誰にも見られていなかったからいいものの、見られたらさすがにまずいだろとホッとひと息ついていたら早川さんが嬉しそうに立ち上がる。その手にはサンオイル。
「ありがとう朔夜君、今度は私が塗ってあげるね♡」
思わず後退るも全身くまなく、けっこう際どいところまでオイルを塗られてしまった。女友達相手に塗り慣れていると言っていたが言うだけあって本当に手際よく上手だった。
顔と水着の中は塗らなくていいだろと思ったけど手際が良すぎて言及するころには塗られていた。
耳をマッサージされたのはちょっと気持ちよかったけど、早川さんはやっぱりSだと思う。
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