第20話 オープン
8月X日
今日は道場に鍛錬に来ている。同じく鍛錬にきていた
「そういえばグリードハイスクールの第2話見たぞ。おまえあれ、よかったのか?」
「あれ、とは?」
「あれだよあれ、エンディングのやつ」
「ああ」
エンディングのやつとはおそらく撮影シーンのメイキング映像のことだろう。そう、僕が早川さんと付き合うことになった練習の際、バッチリカメラに撮られていたのだ。監督が可能なら使いたいとのことで、お互いのマネージャーと事務所に確認をとり、最終的に2人が良ければということになったのだが、早川さんがめちゃくちゃ乗り気だったのでOKをだしたのだ。
やはり他人の恋愛のアレコレは盛り上がるもの。こんな新人の、売れるどころか顔も知られていない2人の馴れ初めでも楽しんでくれる層は一定数存在したようだ。
「すごい時代になったなぁ。一昔前はみんなお忍びだったんだぞ?」
「でもなんか、個人的にはその方が楽しそうな気もしますね」
そういうと日向先輩はきょとんとした顔をした後笑い出した。
「ちがいねぇや、人目を避けての恋人との逢瀬。ロマンスだねぇ」
「先輩にはいないんすか?いい人。ちなみに僕は初めて恋人ができました」
「そりゃいたりいなかったりその時々よ、今はいないなぁ。緋月は高一だろ?高一の夏に彼女できりゃあ上等だろ。もちっと筋肉つけて魅せられる体にしないとな!」
魅せられる体。早川さんの努力の結晶のようなボディラインを思い浮かべる。プールや海で横に並んだ自分を想像する。
「先輩、あとでもう一回筋トレお願いします!」
「お?やる気まんまんじゃん。でも、筋肉は1日にしてはならず、だぞ?あんまりやりすぎもよくないし、やらないと落ちちまうからな」
そう言って日向先輩は美しい筋肉を見せつけてくる。
「そういえば緋月はパルクールって知ってるか?」
「パルクール?あー、街中で三次元的に走るやつですか?アニメで見ました」
「そうそう。オレもアニメで見てさぁ。あれかっこいいよなぁ、そのうち映画とかドラマでもパルクールをテーマにした作品出てくると思うんだよ。で、だ。そこでそれなりにできる俳優がいたらいいんじゃないかな?って思うんだ」
「パルクールですかー、あんましできる気はしないっすけどねー」
「まぁそういうなよ。そう思って練習してるんだけど、1人じゃさみしくてなー。帰りにちょっとだけやろうぜ?終わったらメシおごるから」
「そういうことなら。ゴチになります」
「じゃあちょっと投げ役変わってくれ」
「はい」
先輩と投げ役を代わる。基本は柔道の投げ技で、時おり喧嘩のような投げ方やボディガードがやる組み伏せ方など先輩の時おり先輩の指定や指導を受けながら投げていく。受け身よりエネルギーを使うが、失敗しても先輩はキレイに受け身をとってくれるので失敗を気にせず気持ちよく投げられる。なにより見ているだけでも勉強になる。ひとしきり先輩を投げたら今度は軽い組手をする。
奥で殺陣の見学をして、肩と下半身の筋トレを見てもらい、道場を後にした。
〜〜〜
「ここ、ここ!」
道場からの帰り道、日向先輩に連れられて公園にやってくる。スケートボードやバイシクルモトクロスをできるスペースがあり、ここでいつも練習しているらしい。けっこう広くて設備もコンクリートでしっかりしているが、
「これはたしかに寂しいかもですね」
「だろー?ちょっと見てな」
先輩は軽やかに走り出すと障害物によじ登ってその上を走ったり跳びこえたりなかなかかっこいい走りを見せてくれた
「緋月もやってみ?」
振り返って声を張る先輩のほうに見よう見まねで走っていく。
「なかなか筋がいいじゃねぇか」
「ありがとうございます」
動画を見たり指導を受けたりしながら5本ほど走った後、焼肉をご馳走になって家に帰った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます