失くしたもの

 あのころの僕は、どれほど幸せだったのだろう。


 毎日のように悩んで苦しんで、死ぬことも考えていた。


 それでも幸せだったのは、はじめて居場所を見つけられたから。


 まぶしいほどに輝かしい日々は、もう二度と戻ってはこない。


 離ればなれになるのが怖くて、自分から遠ざかってしまった。


 やりなおせるのなら、素直に「たすけてほしい」と言えるのに。


 それとも、同じ結末が僕を待っているのかな。


 まぶしいほどに輝かしい日々は、もう手に入れることはできない。


 他人に戻ってしまうのが怖くて、自分から手を放してしまった。


 お願いをしたなら、きっと手を離さないでくれたのに。

 

 優しくて温かい人たち、どうして傷つけてしまったのだろう。


 会いたい、話したい、離れたくない。


 あのころもいまも、それだけは変わらない。

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