◆7 朱鷺の夢──生まれ変わったら……

【13日目】1975年(昭和50年)12月15日月曜日


  頭がぼやけている。水の流れる音が、どこからともなく聞こえてくる。

 誰かが歌っている。

 ──子守唄か?

 瞼が重い。

 ──このまま眠ってしまったら、どんなに気持ちがいいだろう……

 夢を見ていた。目の前で、次から次へと場面が変わる。

 薄目を開けてみる。

 ──青い。

 ──青い空か?

 前にも見たことがある景色だ。

 ──まだ夢の続きかもしれねえ。

 ──疲れた……

 ──もう少し眠ろう。

 ──夢の中でも夢を見るのだろうか?

 そんな他愛のない考えが浮かんだ。自ずと瞼は閉じた。

 ──青い、青い空、青い……

 頭の中で念仏みたいに唱え続けた。

 『港のヨーコさん』の歌が聞こえる。

 ──いい歌声だ!

 ──昔、聞き覚えのある声だ……ハテ?

 寝入り端に、こんなにも心地いい声を聞けば、誰だって熟睡できるだろう。水の流れと歌声とが奏でるハーモニーにウットリと聴き入った。

 いつしか、イビキをかいている。眠りながらも、ちゃんと分かっている、自分のイビキだと。それは次第にケダモノの雄叫びに似た呻き声に変わっていった。

 ──生まれ変わったら、人間になろう!

 朱鷺は決心した。



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