第25話 リア充なアイツ

「何だったんだ?さっきの…。」

「…ですねぇ〜。」

 静まり返っていた、試合場もざわつきそれぞれ控え室や外で昼食を食べ始めている。

 ダラダラと愁だけが、オレ達のいるところに戻ってきた。

「章斗は?」

「あ?あぁ…。昼、昼、佐野さんと食べるって…。」

「え?…あ…、あぁ…。」

 別に、そういう事、聞きたかった訳じゃあないんだけどな。

「飯、行こう。あまり時間ないし…。」

 それ以上聞くなという雰囲気ありありで、この話は、切り上げられた。

 誰のせいで、遅くなったと思ってんだよと思いながらも、愁と沢渡、3人で試合場を後にした。

 会話の無い昼食を取った後、控え室に帰ってきた。

「はぁ〜…。」

 思ってた以上に、でかいため息となってしまった。

 そういえばオレ、章斗に負けたんだった…。

 オレだけでなく、愁も…。

 チラリと愁の方を見る。

「仕方ない…。葵…。」

 休憩時間の謎の試合が無かったかのように、先程の試合の事で、オレを慰めようとする愁に、イラッとする。

「お前は、悔しくないのか!」

「……。」

 愁は、ノーコメントだ。

「はぁ…。」

 そういえば、優勝したら、何か冬月の言う事聞かなければならなかったんだ…。オレ、何さされるだろ…。

「あれ?そういえば、章斗は?」

 兄と昼食を取ると言って、席を外していたが帰ってきてたのは、確認してた。

 …が、今、また居なくなってる。

「あ、何か、他校生の女子に呼び出されてましたよ。もうすぐ、クリスマスですしね…。」

 沢渡が答えてくれた。

 なに?リア充かよ。優勝して、彼女まで出来て…。なんなん、アイツ!!

 その上、まだオレという先輩を下賜づかそうとしてるのか!

 なんてヤツ!

「佐野さんっ!!」

 イライラの高調の時に声を掛けてきたヤツがいた。

 見ると、林とかいう、男で、オレの事を好きだって言いやがった。

 どうも、オレを女の子だと勘違いしたらしい。

 ほんと、嫌になる。オレは、何もかも吹っ切るように、控え室を後にした。



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