第24話 いざ!
「章斗のやつ、どこへ行ったんだ?」
もうすぐ、表彰式が始まるってのに…。
12月16日。今日は、中高合同稽古会がある地区大会だ。
試合が終わり、表彰式が始まる時間だ。それから、昼休憩を挟み、中高合同稽古がはじまる。
「もう、表彰式始まるじゃないか…。」
周りをクルクル見ながら走りまわる。
「あ…っ。」
人が行き交う数メートル先に高身長の3人が話し込んでいるのが見える。その中の一人に冬月がいた。
ほんと、手間掛けさせやがって。
「おい!章斗!」
って声掛けてから気付いた。
「あれ?愁…。それに、兄ちゃんも…。」
よく見たら、3人の他に審判の格好した人がいた。3人の高身長の固まりに埋もれていたから、わからなかった。あの人は、今回の試合の審判長の高田先生だ。3人は、その高田先生に礼をしている。高田先生は、ポンポンと兄の腕を軽くたたき、試合場へ戻って行った。
何だ?何かあったのか?それとも、ただの挨拶だったんだろうか…。
しばし、前方の3人を眺める。
「はっ!!こんな事、してる場合じゃなかったっ!!」
もうすぐ表彰式が始まるのに、愁も冬月も何のんびりしてるんだ?
慌てて3人の元へ走っていく。
3位は、オレと蒼生の荻原。準優勝は、愁。
優勝は、なんと、彰人だった。アイツ、オレに勝ったうえ、愁にも勝った。
はっきり言って、悔しいっ!!
でも…。
ずっと一緒に稽古してきた仲間だからこそ、ちょっと嬉しいっていう気持ちも、確かにある。
……。
でも!やっぱり、悔しいっ!!
「あれ…?、何か試合するのか?」
表彰式も終え、合同稽古の前の昼休憩の準備をしていたオレの後ろを通った生徒達が話すのが聞こえた。
…?
手を止めて、試合場の方に目をやる。
確かに6つの試合場の内、一番奥の試合場に道着着た人3人、審判の服着た人3人集まっている。
ほんとだ…。練習試合でも、するのだろうか…?
う…ん…?
「え?なんで?」
思わず、声が出る。
試合場に居たのは、愁と章斗、それから兄だった。兄は私服から道着に着替え、面も小手も付け、竹刀も持ち、準備万端だ。そして、章斗もそうだ。
何?二人が試合するのか?
「どうなってるんですかね…。」
沢渡がいつの間にか、隣に来ていた。
「ゔ〜ん。」
何か、俺だけ蚊帳の外感あるんだけど…。と言っても、沢渡もそうか…。
とりあえず、見守るしかないか…。
3人の審判が、定位置に着く。
兄と冬月が向かい合う。
「始めっ!!」
ほんとに試合が始まった。
互いに心を取り合い、カチャカチャと竹刀が鳴る。
昼休憩に入っているというのに、静かだ。
他の皆も、観ているのだろう。
「めーん。」
兄から動く。冬月は、落ち着いた様子で、軽くいなす。すばやく互いに構え、次の攻撃を打つ。
「めーんっ!!」
「面ありっ!!」
赤の旗があがる。
赤は兄だ。
「2本目っ!」
「小手ーっ!!」
「小手ありっ!!」
冬月がすぐ取り返す。
あの兄から、一本取った…。
ごくり。喉が動く。
「勝負っ!」
しんと静まった試合場。
誰もが休憩時間に始まったにすぎない試合に固唾を呑んでいる。
攻撃の咆哮と、ドンと足をふむ音、竹刀の音それしかない。
ピーッ!!
タイムオーバー。
主審が兄の方を見て、「続けようか」と声掛けている。兄は、断った。始めから、4分だけという話だったらしい。
「引き分けっ!」
2人は礼をして、試合コートから出る。
3人の審判も昼休憩の為、会場自体から出て行った。
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