第20話 決戦の日
地区大会当日
団体戦、5人揃っていないこともあり、2回戦目で敗退。
個人戦が、始まった。1回戦目、章斗と蒼生の柳原の試合だ。オレと愁は、まだ自分の試合まで時間があるので、沢渡と3人で見る。
「正面に礼っ!はじめ!」
「「あーっ!!」」
各試合場から、咆哮が聞こえる。
「面ありっ!」
試合開始早々、柳原が動く間もなく、章斗が面を取った。
「2本目っ!!」
「めーっ!」
柳原が、焦って攻撃を仕掛けてくる。章斗は上手く交わし、再び向き合う。相手が動こうとした瞬間、
「こてーっ!」
相手の右手首を討つ。
「こてありっ!」
完璧なこて。文句無しの冬月の勝ちだ。
「勝負あり。」
お互いに礼をして、終わる。帰ってきた冬月を囲み、それぞれ背中を叩き、激励し合う。
「章斗!調子、抜群だなっ!」
「葵先輩のおかげです。」
満面の笑みが返ってくる。
「章斗が、頑張ったからだよ!じゃ!オレも行ってくるな!」
そう言って、冬月の背中を軽く叩いた。
「はい!先輩も頑張って!!」
そんな冬月の言葉を背中で受けた。
それから、冬月も、愁もオレもそれぞれ勝ち進んでいく。
次勝てば、決勝戦だ。正直、ここまで勝ち進めるとは自分でも思わなかった。試合場の外側の向こうで待機する赤のタスキをつけた相手を確認する。
冬月だった。
お互いコテをつけた左手を上げ、挨拶をする。面を付けてて、二人共表情はわからないままだが、きっと笑顔だろう。
そうか…。冬月か…。そうだよな。アイツこの間の試合が上手くいかなかっただけで、本当は、めちゃくちゃ強いんだからな。
嬉しいっていう気持ちの反面、先輩の自分が後輩の冬月に負ける訳には…。というプレッシャーが沸いてきた。まずいな…。
アイツが4月に入って来た時から、思ってた。冬月は、オレより上手い。長身で、少しの動作で面を討つことができる上に、試合の組み立て方のセンスも良かった。オレは身長が低い分、面や小手が遠い分、剣道において不利だ。胴は近いけど。オレが冬月に勝てるものといえば、スピードくらいしか無い。
……。
まあ、難しい事考えたって仕方ないか…。
目の前の試合が終わる。
試合開始の位置まで歩き始める。
いつもの稽古と思えばいい。オレだって、必死にやってきたんだ、そうそう取られる訳にはいかない。
相手の冬月を見据えて構える。
「はじめっ!」
主審の声が、響いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます