第17話 番外編 先輩、今だけいいですか?

 パタン…。

 自分の部屋の閉まる音で、我に帰る。

 あ、葵先輩…、門まで送らなきゃ…。と気付くが、その一歩の足が出ない。今、走って追いかければ、間に合うのは分かってるのに、動けない。

 葵先輩…。

 サラリと額に掛かるストレートの黒髪。

 白い肌に、くるんとした黒々とした大きな瞳、小造りな鼻に、小さくぷっくりとした唇。さっぱりと整えられた襟足から肩にかけてのライン。華奢な身体は、俺のティシャツの中で泳いでいた。

 はぁぁぁぁ。

 あれが、ついさっきまで俺の元に居たなんて…。

 はぁぁぁぁ。

 胸元に閉じ込めていた、葵先輩に貸していた服に顔をうずめる。葵先輩の匂いが微かにする。し、幸せすぎる。

 !!

 俺は、気付いてしまった。

 徐ろに服を脱ぎ、先輩が着ていた服を着る。

 う…わ…。

 せ、先輩の感触がするような気がする…。

 !!

 更に、俺は気付いてしまった。

 部屋の隅にきちんとたたまれていた布団を再度広げ、その中に潜り込む。先輩の匂いが、より濃くなる。


 先輩…、今だけ、今だけです。

 ごめんなさい…。身体が熱くてどうにもならないんです。


 俺は、ガチガチに興奮した熱いものを解放した。


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