第16話 借りてた服の件
朝ご飯を食べ終え、冬月の部屋に帰ってきた。
「章斗、この服、洗って返すな…。」
「え、いいですよ。こっちで洗っときますよ。置いて帰って下さい。っていうか、もう帰るんですか?」
「あぁ、親と兄からメール来てて…。」
スマホをチラリと見せる。
「お、お、お兄さんですか…。」
何故か、冬月の表情が引きつって見える。
「うん。」
答えながら、着替える。
「とりあえず、今日は帰るわ。色々ありがとな…。」
そう言いながら、借りた服を丁寧にたたみ、カバンに入れようとしたら、取り上げられた。
「だから、いいですってば。こんなに早く帰るんなら、尚更、置き土産として 置いてって下さい。」
「置き土産って…、なんだそれ?」
オレの着ていた服をひしっと抱え込む。
「葵先輩の匂い…、じゃなかった。とにかく、こっちで洗っておくんで!」
何故か、必死の冬月の様子…。
「でもさぁ、勝手にお邪魔した上に、着替えまでって、ちょっとオレ的には申し訳無いんだけど…。あっ、パンツはちゃんとあたらしいのん、返すなぁ。」
「ば…っ。…パ…パンツ…。」
耳まで真っ赤になって冬月が、狼狽え始めた。
「ぷ…っ。何で、章斗がパニックってんだよ。とりあえず、色々世話になったな。ありがとう。帰るな…。」
オレが着ていた服を抱きしめたまま、赤い顔で呆然とする章斗をそのままに、家路に着いた。
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