第7話 兄とアイツ 2
「1、2、3、……。」
オレが着替えて道場入る頃には、素振り稽古が始まっていた。慌てて一番下座に行き、稽古に加わる。一番前に兄が居て、兄と向かい合うように愁、冬月、オレが横一列に並んで素振りをする。それが終われば、面、小手付けて稽古。いつもの様に、進んでいく。
「休憩〜。」
愁の号令で道場の隅に行き、正座し小手を外して面を外す。
「えっ。兄ちゃん……。」
どうしてここに?という言葉を飲み込む。
通常、兄は一番上座に座る。つまり、オレから見れば愁の向こう隣に座るのが普通。でも、今は一番下座にいる冬月とオレの間に座っている。デカい兄が座ってるので、向こうにいる冬月が全く見えない。
「なんだ?葵…。」
じろりと睨まれ、何も言えなくなってしまう。今日は、どうしたんだろう。こういうの、兄は守るタイプなのに。
「やぁぁっ!」
休憩も終わり、道場に野太いの咆哮が響く。二人一組になって、どんどん打っていく。3分ごとににローテーションしていく。
「止めー。」
愁の号令で、床を踏む音、咆哮で一杯だった道場が、シン…とする。
「佐野先輩、どうしますか?試合稽古しますか?」
肩で息をしながら、愁は兄に訪ねる。いつもより、呼吸音が大きい。愁だけではない、オレも冬月も肩を上下させている。兄が増えただけで、稽古は随分キツくなる。
「そうだな。一度休憩して、試合稽古しようか。」
そう言う兄だけが、平然としている。
バケモノ…。
ひやりとする。
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