第10話 再会と再開

栄和デザインのオフィスの前で、次郎丸の背中越しに建物を見上げたつぐみは、二の足を踏んだ。


自動ドアを抜けようとした次郎丸が、聞こえない足音に気づいて振り向いた。


しかめっ面を向けられて、慌てて後を追う。


ここからは完全アウェーだ。


気を引き締めなくては。


ぐっと拳を握る部下に、次郎丸が訝しげな表情になる。


「なーにやってんだつぐみ。ああ、そうか、お前ここ来るの初めてだったな」


これまでも新店の内装設計を依頼してきたが、訪問していたのは、決まって次郎丸と店長のふたりだった。


こんな事でもないと、きっと一生来る事は来なかっただろう。


「ご縁がなかったもので」


「そうツンケンするなよ」


「ツンケンしてませんっ」


出来ればいまも、少し、いや、だいぶ帰りたい。


せめてうちの会社に来て貰うとかなら良かったのに。


次郎丸が出かけるついでに打ち合わせ訪問すると言い出した時には、予定が流れないかなとチラッと思った。


メールのやりとりとかなら、まだ大丈夫そうなのに・・・


受付で内線を鳴らした次郎丸が、つぐみの顔をまじまじと見つめて、面白そうに頬を緩める。


「喧嘩しに来たわけじゃないんだぞー」


宥める様につぐみの髪を豪快に撫でた次郎丸が、満足げに息を吐く。


これから打ち合わせだっつの・・ほんっとに・・


慌てて手櫛で髪を整えながらこっそり溜息を吐く。


妹や娘ではなくて、ペットになった気がしてしまうのはこういう時だ。


こっちの気分おかまいなしに構いたがるのはやめてほしい。


恨めし気な視線を逞しい背中に向けつつ、深呼吸する。


当然のことだが、あれ以来六車とは連絡を取っていない。


突発事故で渡された連絡先だ。


お店にも挨拶に行ったし、気まずい思いをする必要なんて無い。


けれど、何となく落ち着かない。


今度はどんな攻撃を受けるのかしら・・・


今日は打ち合わせでやってきたのだ。


イチイチ凹んだり、傷ついたりしていられない。


仕事、仕事と割り切って頷く。


と、フロアの奥から六車がやってきた。


次郎丸の隣に並んでいるつぐみを、一瞥して、表情を柔らかくする。


歓迎されているのかと怪しんだら、すかさず変則攻撃が飛んできた。


「鬼退治でもしに来たんですか?」


明らかに勇んだ様子のつぐみへの感想だ。


負けるもんかと睨み返す。


「あんたが鬼なら一撃でやっつけてるわ」


出会い頭の一言を綺麗に打ち返して、少しは溜飲が下がった。


次郎丸が、六車とつぐみを交互に見つめておいおい、と口を挟む。


「なんでそうなるんだ・・・六車もつっかかるなよ。つぐみも、ちょっと落ち着け、な」


「もう!社長、だからそれやめてって」


再び伸びてきた手から逃れようと、一歩前に出る。


これでも打ち合わせや外回りがある日は、朝から髪を巻くようにしているのだ。


大きな手で遠慮なく撫でられたら、せっかくのセットも台無しになってしまう。


と、予期せぬ方向から、次郎丸とは正反対の薄くて節ばった掌が伸びてきた。


まったくの不意打ちだ。


身動きの取れないつぐみの髪に触れたのは、六車の長い指先だった。


硬直するつぐみを余所に、するりと髪を撫でてすぐに離れる。


綺麗に直せていなかった髪を、整えてくれたらしい。


けれど、そうと気づくのに30秒近くかかった。


唖然とするつぐみの表情を楽しそうに見つめて、六車が背中を向ける。


「次郎丸さんは、ちょっと構いすぎですね」


「そうかー?すぐにつぐみは臍曲げるからな」


「曲げません!」


「きゃんきゃん言う時には、宥めるのが一番手っ取り早い」


「ちょ・・」


「覚えときます」


「うん、覚えとけ。楽だから」


「覚えなくていいです!もう、社長!」


”その方が扱いが楽だから”


暗に示された言葉に、イライラしながら六車の後頭部を睨み付ける。


こっちはお客で、得意先なのにどうしてここまで雑な扱いなのか。


言いたい事が溜まっていく一方のつぐみと、いつも通りのマイペースな次郎丸は来客スペースに案内された。


設計事務所だけあって、シンプルだがセンスを感じさせるお洒落な備品で整えられた空間だ。


席に着く前に、ぐるりと室内を見回したつぐみに気づいた六車が、自慢げに口を開く。


「堅苦しくなくていいでしょ」


「・・そうですね」


物凄く不機嫌そうに返して、急いで席に着く。


隣に座った次郎丸が、やれやれと肩を竦めた。


やっぱりヒール履いて見下ろしてやれば良かった。


バランスが取れず、ふらつく可能性を考えて本日もフラットシューズを選んだけれど、その選択を少しだけ後悔する。


馬鹿みたいな対抗心は一向に収まらない。



★★★★★



ファイルから取り出したつぐみのデザイン画を並べて、六車がへえ・・と声を上げた。


「この間のアイデアの山が、こうなったわけか」


「この間?」


敢えての無言を通していたのに、次郎丸が耳ざとく訊き返した。


もう、ほんっとに社長いらんことしい!


余計な情報が六車の口から出る前に、つぐみは急いで先手を打つ。


「この前の休日の夜に、とあるお店の前でばったり会ったんです」


「そこまで嫌そうに言う事?酷いな、俺、紙もペンも場所も提供したでしょ」


「全部、津金さんとすみれさんが用意してくれたものだから!」


居心地のよいカフェに相応しい穏やかな夫婦を思い出す。


と、同時にとびきりおいしい絶品バーガーも思い出してしまった。


忘れないうちにもう一度食べに行きたい。


「あんた、あれからお店に行ったんだな」


「なんでそれを」


「おとといの夜、店に行った時に津金さんから聞いた。わざわざ挨拶に来てくれたって喜んでた」


「と、当然でしょ・・お世話になったからお礼しに行ったんです。ノートも殆ど使っちゃったし」


「ふーん」


「なによ、あたしは社会人として当たり前の事をしただけで」


「別に。すみれさんが、つぐみさんのこと凄く気に入ってたよ。常連さんになってくれたら嬉しいって」


人目を気にせず、ひとりでのんびり過ごせるお店は貴重だ。


店主の妻がそう言ってくれるのはとても嬉しい。


人当たりの良いすみれの気持ちのいい笑顔が浮かぶ。


「・・ありがとう」


足を運ぶ理由が出来た事が嬉しくて、そう答えたら、六車が生ぬるい視線を向けてきた。


「・・なによ」


「お礼、言えるんじゃん」


「失礼ね!言えます!嫌いな相手じゃなければ、ちゃんと礼儀は尽くすわよ!」


次郎丸に”きゃんきゃん言う”と指摘されたばかりのなのに、止まらなかった。


豪快に噛みついて、視線を外す。


「まあいいけど」


六車はとくに意に介した様子もなく、視線を正した。


「次郎丸さんも待ってるし、そろそろ打ち合わせ始めましょうか」


見れば、喧々囂々のやり取りに口を挟む暇が無かった次郎丸が、どうしたもんかと渋い顔になっていた。


「すいません」


次郎丸に向かって謝罪する。


「すごいな、六車」


「はい?何がですか」


「つぐみがここまで思った事口にするの、初めて見たぞ」


「へー・・そうですか、貴重ですね」


「何言ってんの!?」


「まあそうだな、貴重だな。お前はなー、腹の中でぐるぐる考えて言わない事のほうが多いからな」


一気に脱線しかけた会話に、つぐみが待ったをかける。


このままでは、大やけどを負いかねない。


「打ち合わせでしょ、さっさと始めますよ!この後も社長は予定立て込んでるんだから!」


ファイルをトントンとテーブルに叩きつけて、六車を促す。


それ以上食って掛かられることは無く、そのまま微妙な空気感で打ち合わせは始まった。


「前に送ったデータは、既存店舗を見させてもらって、そこに、新シリーズの、白っていう漠然としたイメージだけを盛り込んで作ったんですけど。やっぱり、もう一度案を出し直させて貰ってもいいですか?」


「え・・でも・・・」


六車が提案してきたデザインは、アメリアの雰囲気を大切にしつつも、新たな一面を見せる斬新なものだった。


次郎丸共々気に入っていた。


戸惑う視線を向けたつぐみに、次郎丸が頷く。


「多少の修正は必要かもしれんが、六車のデザインをえらく気に入ってんだよ、俺もつぐみも」


「ありがとうございます。でも、今回出して貰った靴のデザインを見たら、もう少し違ったものも作りたくなったんで。きっと、次の方が気に入って貰えると思います」


確信めいた発言に、疑いつつも期待してしまうのは、前回のデザインが、予想の上をいく出来だったからだ。


六車の事は気に入らないが、彼の描くデザインは、物凄く気に入っている。


「あのノートに、ペンで描いてる時もいいなと思ったけど、色鉛筆のほうがしっくり来るな。愛着を感じるからかな」


六車が呟いた感想に、不意打ちで胸が鳴る。


デザインを褒められるのは何より嬉しい。


相手が誰であっても。


つぐみにとって、唯一の武器と呼べるものだ。


ほら見た事か、あたしの本気を思い知れ!と威張りたい気持ちもあったのに、口に出来なかった。


六車がデザイン画を見つめる眼差しが、とびきり優しかったからだ。


「壁のディスプレイの案は・・気に入ってるんで、そのまま残して貰いたいんですけど」


デコレーションを施した木箱を組み合わせて、その中に靴をディスプレイする案に、とくに惹かれたのだ。


「もちろん、ご要望は訊きますよ、いくらでも」


さらりと六車が言ってのけた。


打ち合わせが始まってしばらくすると、女性社員がお茶を運んできた。


修正案を出すという六車と次郎丸は予算折衝に入っており、こうなるとつぐみの出番はない。


どんぶり勘定が得意な次郎丸は、会社を引き継ぐ際も、会計関係の処理ははなから諦めて中島に一任してきた。


新店舗の予算枠を組むに当たっても、中島と綿密な打ち合わせを重ねているので、何を削って、どこに費やすのかしっかりと把握しておく必要がある。


穏和な中島だが、経理関係での有耶無耶な報告は、相手が次郎丸であっても絶対に許さない。


所謂お得意様割引で、差し引いて貰える額を確認しつつ、どこまで上乗せが可能か探る次郎丸の隣で、六車が提示した費用見積の明細をぼんやり眺めていたら、お茶を置いた女性社員が、意味深な笑顔を向けてきた。


「つぐみさん、ですよね」


完全に油断しきったところに声を掛けられて、思わず肩が撥ねた。


どうして名前を知っているのか。


「へ!?あ、はい・・・そうです・・けど・・」


「やっぱり、アメリアのデザイナーさんですよね!うちの事務所で、知らない人はいませんよ」


なんでそんな有名になってるの!?。


次郎丸が六車に、つぐみの日常のデザイン作業の事まで話をしていたようだから、その話が伝わったのか。


目を白黒させるつぐみの向かいで、見積から視線を上げた六車が、いつになく強い口調で割って入った。


「大浜」


「いいじゃない、さんざん呼んでたんだから」


「は・・」


次郎丸ではなく、六車が呼んでいたと言われて、思わずぽかんと口を開けてしまう。


「ずっとお会いしたいと思ってたんですよ」


「は・・はあ・・」


嬉しそうに報告されてもどうしていいか分からない。


曖昧に返事をしたつぐみに、六車がすかさず続いた。


「大浜、いいから仕事戻れって」


「はいはーい、失礼します、ごゆっくり」


「おしゃべりですいません。で、こっちの塗装費ですけど・・」


何食わぬ顔で、再び説明に戻る六車。


反対につぐみは、もう見積を眺める余裕は無くなっていた。


無駄に大きい、口の減らないデザイナーだって噂されていたんだろうか。


自分の与り知らぬところで、どんな悪口を言われていたんだろう。


浮かぶのはネガティブな内容ばかり。


さっきの大浜という女性の視線は明らかに”興味”でいっぱいだった。


素敵な靴をデザインされているご本人も、とっても素敵な方なんですね!なんていう、羨望に満ちた眼差しではなかった。


胸の奥がざわざわする。


あたしのことはどうだっていいのよ!


黒子に徹したいんだから!!


お願いだから、こっちじゃなくて、靴を見て!!


つぐみの作りだしたデザイン=つぐみという方程式が一番しっくりくるのだ。


そこに自分の容姿や言動は加味しないでほしい。


身勝手かもしれないけれど、役を演じている女優だって、舞台を降りればただの人だ。


それでいいのだ。


さっきの大浜の視線は忘れる事にしよう、そうしよう。


必死に意識を切り替えるつぐみの耳に、次郎丸の声が飛び込んできた。


「よし、大体分かった。これは持ち帰ってうちの会計と相談する」


「よろしくお願いします」


「おう。じゃあ、後はつぐみ、ひとりで大丈夫だな?」


テーブルに広げていた見積関係の書類を、雑に纏める次郎丸の手から取り上げながらつぐみは訊き返した。


「え?ひとりって」


放っておけば、ブランドバックの中が紙の束でいっぱいになる。


六車が差し出したクリアファイルを有難く受け取って、明細説明の書類と、見積のふたつに分けた後、ふたりの間に置かれている次郎丸のカバンを勝手に開けて、ケースに入れる。


これで一安心だ。


一連の慣れた作業を眺めながら、次郎丸が返す。


「バックヤードの在庫棚の事で希望出したいって言ってただろ。他にも、意見があるなら今のうちに頼んどけよ。お前も六車も忙しいんだから」


「あ・・」


店舗内装がメインではあるが、予算内でバックヤードの改装も依頼していたのだ。


店舗スタッフから上がってきた意見を纏めて、可能な限り反映して貰うつもりだった。


この後、商工会の打ち合わせがある次郎丸は、これ以上長居出来ない。


1人取り残されるのは、正直不安があった。


喧嘩をせずに居られる自信がない。


けれど、六車の目の前で、一緒に帰ります、と戦線離脱するのも癪に障る。


「六車、つぐみを頼むな、お前ら俺がいなくても喧嘩すんなよー」


わはは、と笑って次郎丸が席を立つ。


本気で、笑いごとじゃない。


次郎丸を見送る為に後を追った六車が、つぐみを振り返って笑った。


「そんな不安そうな顔をしなくても」


「してません!!」


そこは全力で否定しておく。





「保護者はいなくなったけど・・」


戻ってきた六車が、元の席に座りながら茶化す様に切り出した。


「保護者言うな!」


次郎丸がいないと何も出来ないと思われているなら、その考えは即座に改めさせたい。


「あたし、これでも社会人8年やってるの!先輩より、後輩の方がずっと多いのよ!」


「それはなに、自分の方が年上だからってアピールしたいわけ?」


つまらなさそうに六車が口を挟んだ。


”年上”というキーワードに、そういえば、年齢の話をしたことがなかったなと気づく。


「え、あんたいくつ?」


「27」


「ふーん・・・」


今年29になるつぐみの二つも年下。


そんな相手に好き放題言われてきたのだ。


あれやこれやの失礼発言が思い出されて拳を握りたくなる。


だがしかし、ここであからさまに怒るのはもうやめよう。


だって、彼は二歳も年下なのだから。


「じゃあ、六車くん、打ち合わせの続きしましょうか」


つぐみの笑顔を真正面から受け止めた六車が、心底呆れた表情になった。


「つぐみさんさ、年上の余裕を見せてやろうとか、そういう短絡思考どうにかしたら?」


急にくん付けで呼ばれた事に違和感を覚えた六車が、今更くんづけなの?と突っ込んだ。


「う、煩いわね!あんたこそ、会社で人の悪口言いふらすのやめなさいよ!さっきの大浜さん?の視線、明らかに面白がってたし。一体どんな悪口言ったのよ!」


「・・・悪口って・・」


つぐみからの意見を書き留めるつもりだったペンを放り出して、六車が頬杖をついた。


「なんでもネガティブに取るの、やめたら?」


「意味わかんないんですけど」


「さっきのは、まあ、大浜もアレだけど・・悪口としか受け取れないわけ?」


「普通そうでしょ!?初めて来た会社で値踏みするみたいに見られたら、悪い風に取るでしょ!なによ、悪口言ってないっていうわけ?」


何を話していたのか言ってみなさいよ、と顎をしゃくってみせれば、六車が珍しく拗ねたような表情を作った。


長い指でがしがしと後ろ頭を掻いて、溜息を吐く。


「正直に言ったって信じない癖に」


「そんなのわかんないわよ」


まあ、十中八九信じないけれど。


だってそこまで六車の事を知らないし、いい印象は何一つとして抱いてはいない。


でも・・・


さっき、つぐみのデザインを眺める時に見せた眼差しが甦る。


産毛をふわりとなぞられるような、なんとも言えない感覚。


あたしのデザインを褒めた所だけは・・・唯一、認めても、いい。


「悪口なんか言ってないよ」


素っ気ない一言。


「靴のデザインするのが、すごく好きなデザイナーだって、そう言っただけ」


「・・ふーん・・」


「大浜の視線は、次郎丸さんが来るたび、つぐみさんの話するから、みんな会いたがってたせい」


「・・・社長には箝口令しいとくわ」


可愛がられている自覚もあるし、ありがたいとも思う。


でも、取引先でまで話題にしないでほしい。


「もう遅いと思うけど・・で、バックヤードの棚っていうのは?この前店舗行って、作りつけの棚と、倉庫は見てきたけど」


それ以上六車も突っ込むつもりはないらしく、すんなり話が仕事の内容に戻った。


その事にほっとして、つぐみもプリントアウトしてきた要望案を取り出す。


ただでさえ狭いバックヤードだ。


スタッフが行き交う動線をしっかり確保しつつ、無駄なスペースを失くして、かさばる在庫を収納したい。


背の高いつぐみなどは、つい棚の高い位置に荷物を片付けてしまいがちだが、大抵の女の子は届かない。


つぐみや次郎丸に頼むか、椅子か梯子を用意しなくてはいけないのは手間になる。


梯子で靴の入った箱を下ろすのは大仕事だ。


スニーカーや普通の靴ならいいが、長靴やブーツになると箱もかさばるし危ない。


よく捌ける在庫を収納する棚を可動式に出来ないかというのが、今回のメインの要望だった。


つぐみの説明に、六車はいともあっさりと頷いた。


「出来ますよ、ぜんぜん」


「え、そうなの!?」


「引っ張って上の棚を下ろす収納でしょ、最近の家なら標準装備だし」


「知らなかった・・聞いてみて良かった」


「とりあえず、やりたいなっていうアイデアはいくらでも出して貰った方がこっちもプランを組みやすいから。”あったらいいな”を、形にするのが俺たちの仕事でしょ」


今の”俺たち”には、あたし、も入っていた。


直感で分かった。


物作りをする仲間という認識だ。


まさに、つぐみが目指しているものだった。


抗い様のない喜びを、素直に口には出来ないから、必死に頷くだけにする。


「・・・うん」


そうありたいと、いつも思っていた。




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