第7話 大阪

受験日前日。

母親から「あんた大阪にどうやっていくつもり?」って心配された。

受験申し込みをしたものの何の準備もしていなかった。

採用試験は明日の朝一から始まるため前日には大阪で泊まる必要があったのだが、ダメ人間が直ぐに改心できるわけもなく…相変わらず「なんとかなるやろ精神」で無計画のまま過ごし前日を迎えていた。


母親にハッパをかけられながら荷造りをし、泊まるホテルを予約した。

そうこうしている内に時間は遅くなっていたので、早く行くために最終の新幹線で大阪入りすることにした。

母親に車で駅に送迎してもらい、何とか新幹線に乗り大阪入りした私は繁華街の賑やかで楽しそうな光景を横目に見ながらホテルへの歩みを進めた。

チェックインした後は、風呂に入ってコンビニで買った菓子を食べて映画を見ながら寝た。


そして迎えた試験当日。

目覚ましで起きた私は、ホテルで朝食を食べてから身支度を整えチェックアウトをした。

最寄り駅までの道中にあるコンビニで昼食を買い、意気揚々と電車に乗り込んだ。

そこで事件が起きた。

降車予定の駅に電車が停車しなかったのである。

「乗る電車を間違えた!?」

慌ててスマホで乗り換え情報を検索すると別の電車に乗っていた。

普段電車に乗ることがないため、急行や各停といった種類があることを知らず、とりあえず早く来た電車に乗ってしまったせいだった。

「試験に遅刻するなんてシャレになんねぇぞ」とテンパりながら次の駅で降車し、試験会場までのルートをGoogle Mapで検索した。

アプリの予測上では試験開始時間には何とか間に合う算段になっていたので、スーツではあったがダッシュで向かった。

試験会場に近づくにつれ見慣れた光景を目にした。

遊びの心の無い無地のリクルートスーツに短髪または坊主のスーツ集団である。

「こりゃあ間に合ったな」と安堵し、集団の後について会場に入った。


試験会場入り口に立っている試験関係者?らしき人に「どっから来たん?他県からか~それはご苦労やなぁ、頑張ってな」と声を掛けられた。

「は?今のなんな?」と色々と勘繰りながら自分の試験場に入場し着席した。

そして定刻通り試験が開始された。

私は「どうせ地元の採用試験も控えとるし、大阪は嘘抜きの脚色なしで色々書いてやろう」と思い、作文考査で課された出題問題「警察官になって取り組みたいこと」に対してかなり攻め込んだ内容を書いた。

(警察の採用試験では、あまり触れない方がいいとちまたで言われていた内容ではあったが当時の自分はその事象に関する部署で働きたかった)

そして試験は終わり、会場を後にした私は地元以外の場所に全く興味が無かったので、母親から「少し大阪で羽伸ばしておいで」と言われていたが新幹線で直帰した。


試験から数か月後、合否通知の葉書が届いた。

開いて内容を確認したところ…受験人数中の順位が書かれており、『ビリから2番目』という驚愕の結果が書かれてあった。

この結果には正直笑いしか起きなかった。

前回の試験みたいな悔しさとかを全く感じることなく、「ああいう内容を書いたらこういう結果になるんやな」と警察の採用試験に対する教訓を得ることが出来た。

(もしこの話を呼んでいる方の中に警察の採用試験受けている、受ける予定の方がいらっしゃるなら参考にしてほしいと思うので書きます。

私は「警察官になって取り組みたいこと」というお題に対して「公安警察官になってカクカクシカジカやりたいです。」といった内容を書きました。

警察組織の中でも警備部門は謎のベールに包まれています。もちろん同じ警察官でもどんなに勤務歴が長かろうが警備部門を経験していなけば本当の彼らの活動は全く分かりません。【機動隊は別が…。】

そんな部門を目指してこんなことをしたいなんて採用前なのに抜け抜けと語る様な思考が偏っている人間は警察組織にはいりませんよね。と今では思います。

警察官は公平中立である必要があるのです。)


大阪府警の採用試験に落ち、それも初めての一次試験落ちという結果だったが全く何の感情も湧かなかったことから「ただ警察になりたいんじゃなく、地元で警察になりたいんだなぁ」と感じた。

私は地元が大好きだった。

生まれてから今日まで旅行以外で地元を離れたことが無かった。

地元で骨を埋めようと心に決めていた。

だから「地元の採用試験を今度こそ絶対に合格してやろう」と誓い地元警察の受験申込をした。

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