それまで好きでいる私

卯野ましろ

それまで好きでいる私

 今、私は姉を隣に乗せて、車を運転している。


「まだ運転、苦手?」

「あー伝わっちゃった?」

「いやいや。ただ何となく聞いただけ」


 アハハと私の隣で笑う姉は本日、友人の結婚式に参加する。その友人は私の知り合いではない。ということで暇な私は、カーライセンスを持っていない姉の送迎を、引き受けることにした。




「やっぱりネイビーにして正解だったね。似合っているよ」

「それは良かった」


 信号待ちで、ふと家を出る前の会話を思い出す。美しいおべべに身を包む姉を見るのは、今日で二回目。一回目は店で試着した日。

 親戚の結婚式に呼ばれたとき、まだ学生だった私たちは制服で出席していた。初めて友人の結婚式に呼ばれ、初めてドレスを着て出かける姉。

 きれいだ。

 私と同じ顔だけれど、きれいだ。

 別に私は自分の顔が好きだから、双子である姉の顔が好きなわけではない。ただ単に姉が好きなのだ。ずっと。正直、花嫁より目立ってしまうのではないかと心配になるくらい姉はきれいだ。

 今日も姉は、きれいだ。

 そんな姉も、いつかは好きな人と結ばれるのだろう。その日が来るまで、どうか私に隣にいさせて欲しい。それまでずっと、片想いで良いから恋をさせて欲しい。許されるまで、一番近くで愛していたい。




「じゃあ終わったら電話するから」

「はい。いってらっしゃい」

「うん、ありがと」


 式場付近で姉を降ろした。助手席が空いた淋しい車の中で、私は姉に手を振る。

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