魔族の動き
ジエイが街中での情報収集、そしてウィルと傭兵達が貸し馬車の斡旋所に向かうと、ギン達は馬車を御しながら街の外に出ようとしていた。
馬車の中でブライアンがルルーに話かけていた。
「見たところ魔族がこの街で暴れた様子ではなさそうだし、ジエイの情報取集もそこまで期待はできそうにねえな」
「でもブライアン、今の私達はどんなに些細な手がかりでも欲しいから」
「まあな、目撃情報みたいなのがありゃあいいんだけど」
ブライアンとルルーのやり取りを聞いて、ムルカはニリでの魔族の行動に関する自らの見解を話す。
「何をするかは分からんが、魔族にとってはリーザ殿ともう1人の2人を必要としていた」
「ムルカ様?」
「ニリに我らがいたのは想定外であっただろうが、それでも彼らはリーザ殿がニリにいる事を分かったうえで狙っていたな」
「ムルカ様、リーザさんがミックサック団の一員である事は彼らにとっても周知の事実ですから比較的狙いやすかったのでは?」
ルルーの疑問に対し、ムルカが返答をする。
「うむ、そしてそれが彼らが最初にリーザ殿を狙った理由だ」
「最初に……、ムルカ様、そうするともう1人の人物というのは、彼らにとっても狙いにくい人物なのですか?」
「リーザ殿が領主の娘である事、エイム殿が魔力の波動が手がかりになり得るという発言。そして魔族は直接ピトリに転移した。ピトリで身分の高い者である可能性が高くなってくる」
「魔族が動いた様子がないのも、もう1人の捕縛に慎重になっているからなんですね」
ルルーの言葉にムルカが頷くと、今度はブライアンが口を挟む。
「だけど確かリーザの両親は死んじまったんだろう、今の領主だってどれ程リーザに近いか分かんねえしよ」
「待って!領主の娘であるはずのリーザさんを孤児院に引き取らせる事が可能な人物は限られてくるわ」
「どういうこった?」
「これは私の推察だけど、両親を亡くしたリーザさんが何かしらの政治利用される事を誰かが恐れて自らの権限で孤児院に引き取ってもらったことは十分に考えられるわ」
ルルーの発言にブライアンが自分の疑問をぶつける。
「それなら何故自分で引き取らなかったんだ。そんな権限があるなら自分の元に置くのが安全なんじゃないのか?」
「きっと何か事情があったかもしれないわ。だけど可能な範囲でリーザさんを守ろうとしていた」
「じゃあ、それをしたのは今の領主なのか?」
「もちろん、お会いしたら聞いてみるつもりよ」
リーザを取り巻く不思議な環境。ギン達は少しづつもう1人の存在に近づきつつあった。
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