本来の仕事

 魔族の動きがつかめない事に焦りも感じているギン達であったが、そのギン達を乗せた船はニリに到着し、一同は船を停泊させ降りるとルルーが一同に呼びかける。


「とりあえずまずはスップまで戻って司祭様に帝国との休戦がなった事をご報告しましょう」

「うむ、それで司祭様や教徒達が魔族についてどれだけ情報を得てるか次第で我らの行動が決まるな」


 ルルーとムルカがやり取りをしている中、ミニルの名を呼ぶ声がありミニルが反応をする。


「ミニル!帰っていたのね」

「モニカ⁉どうしたの?」


 ミニルを呼んだのはモニカという名の女性でエイムがモニカについてミニルに尋ねる。


「あの、ミニルさん、その方はどなたですか?」

「皆さんにも紹介します。彼女はモニカといって、私が所属する観光ギルドで一緒に案内人をやっています」

「皆さん、初めましてモニカと申します。いつもミニルがお世話になっています」


 モニカが自己紹介をするとルルーも自己紹介をモニカに対して行う。


「ミニルさんの同僚の方ですね、初めまして、わたくしはミッツ教団シスターのルルーと申します。我々もいつもミニルさんにお世話になっております」

「いえ、こちらこそミニルをお世話していただきありがとうございます」

「何でモニカがギルド長みたいな事を言っているのよ」

「それよりミニル、ちょっと大変な事になったのよ!」


 モニカの大変という発言に対しミニルが不安を感じて思わず尋ねる。


「どういう事⁉まさか魔族がプレツに?」

「違うわよ、ミックサック団がこのニリで公演する事になったから今その準備で忙しいの」

「え?ミックサック団がニリで?」

「ギルド長から聞いたわよ、ミニルが交渉してくれたんですって、やるじゃない」


 モニカがミニルに軽口を叩きながらも褒めていると、今度はルルーの方を向き声をかける。


「あのシスター様、公演期間の間だけでもミニルに観光ギルドの仕事をさせていただけませんか?人手は1人でも多い方がいいので」

「え?ですが……」

「構わぬ、それが本来のミニル殿の仕事であるからな」

「ありがとうございます。さ、行こうまずはスケジュールの打ち合わせからよ」


 そう言ってモニカはミニルと共に観光ギルドへと戻っていった。ミニル達の姿が見えなくなるとルルーがムルカに尋ねる。


「良かったのですか?ムルカ様」

「良いであろう、ミニル殿も本来の仕事に戻る日が近づいているのだから、少しでも感覚は戻しておいた方が良いだろう」


 ムルカの発言を聞いてギンも質問をする。


「それじゃあミニルだけニリに残って、俺達だけでスップに行くんですか?」

「折角だ我らも公演を観ていこうではないか」


 ミニルが観光ギルドの仕事をしている間にムルカの案でギン達はミックサック団の公演を見る事となった。

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