複雑な胸中
スップの街より少し離れたミッツ教団が運営する孤児院の庭で天気が良いこともあり、プラナが洗濯物を干しており、そのプラナの仕事をマリンとアルが手伝っていた。
プラナ達が洗濯物を干し終え、マリンとアルのやり取りを微笑ましく見ていたプラナがマリンに声をかける。
「マリンちゃんは本当にアル君のことが好きなのね、そんなに何回もお嫁さんになりたいって言うなんてね」
「うん、ねえねえ、プラナおねえちゃんはお嫁さんになりたい人っている?」
「え、わ、私⁉」
「うん、だってプラナおねえちゃん、すごく優しいしきれいだから」
マリンの言葉を受けて、少し照れて顔を思わず伏せてしまうが、少し間ができて、真剣な顔になってから言葉を発する。
「あのね、マリンちゃん、アル君、せっかくだから話しておきたいことがあるわ」
「何?」
「何だ?」
2人の返答を聞いてからプラナは話し始める。
「実はね私、その、好きな人がいるの」
「え、じゃあ、その人のお嫁さんになるの?」
「ううん、私はその人が好きだけど、その人が私のことを好きかどうかは分からないの」
「そうなの、でもおねえちゃんの気持ちは言わないの?」
マリンの問いにプラナは少し表情を曇らせながら話す。
「私が自分からその人から離れちゃったし、もう言いたくても言えないの」
「どうして、好きだったのに?」
「えっと、ねえ……、私は兄さんと過ごしたいと思った。その為に、その人から……」
次の瞬間、プラナの目から涙があふれてきて、アルは戸惑って声を発する。
「プラナねえちゃん泣いてんのか、どうしたんだよ?」
「ごめん、色々な事を考えちゃって、でもねえ、私はその人が生きていてくれれば十分なの。私の事を例え忘れても」
「でもそれだとプラナおねえちゃんはずっと悲しいよ」
「大丈夫よ、私には兄さんがいてくれるし、それにマリンちゃんやアル君、他の子供達の成長を見届けるのが今の私の幸せよ」
プラナにとっては例えカイスは帝国の騎士でなくなってもとても大切な存在であり、今でも思わぬ日はなかった。
以前ギンが帝国とプレツの国交が正常化したらカイスに会いに行けることを告げられたが、帝国とプレツの同盟は難航している事がプラナの耳にも入っており、現実的に難しいことを実感し、マリンたちに話していることで自らのカイスへの思いを再確認し、涙があふれたのだ。
しかし、自分に言い聞かせる発言をするものの、その心中はやはり穏やかではないプラナであった。
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