魔法の弓の秘密
ヨナはトッポックス領主を継承することになった弟のフランツの後見を自ら願い出るが、マルスもそう考えており、更にマルスはヨナに対しフランツが成人し、後見を終えた後は自らの近衛兵として仕えて欲しいことを告げる。
「あたしが近衛兵で本当にいいんですか?」
「もちろんだ、それに私が至らぬばかりにお前やダリルには多大な迷惑をかけてしまった。私にはこういう形でしか報いることができんからな」
マルスの思わぬ提案に戸惑うヨナであったが、しばし沈黙しつつ自らの考えをまとめ、マルスに告げる。
「あ、あの、あたしは正直、自分はもうグラッスやトッポックスに自分の居場所はないと思ってましたし、今回の件も解決したらまた傭兵稼業に戻ろうと思っていました」
「それは私の申し出を断るという事か?」
「あ、いえ、むしろ王様には感謝しています。その、あたしに居場所を用意してくれたことに、だからそのお話は謹んでお受けします」
ヨナは1度一息ついてから更に自らの思いを話す。
「だけど、こんなあたしに付いてきてくれたやつらもいます。あの、全員でなくてもいいのでグラッスの兵として仕えさせてもらえませんか、お願いします」
「分かった、厳選し、素養の高い者を優先で登用しよう。それで、その者達はいずこに?」
「何人かは城の外にいて、残りはトッポックスの屋敷を守っています」
「そうか」
ヨナの申し出に返答した後、マルスはダリルに対し、ある事を尋ねる。
「ところでダリルよ、ガンシルが申していた魔導具とやらに心当たりはあるか?」
「いえ、ありませぬ」
マルスとダリルのやり取りを聞いて、ヨナは自らの持つ魔法の弓を2人に見せる。
「もしかして、これ……なんじゃ?」
ヨナの魔法の弓を見て最初にダリルが反応をし、言葉を放つ。
「この弓がか?見たところ普通の弓のようだが」
「実はこの弓と矢には魔法が付与できて、あたしはこれに眠らせる魔法や麻痺させる魔法を込めている」
「待て⁉ヨナ、お前には魔法の素養がなかったのでは?」
「あたしもそう思っていた、でもこの弓を使う時には魔力が発現したんだ」
あくまでも弓を使用する際にのみ魔法が発現することを告げたヨナにマルスが尋ねる。
「それでこの弓をどこで手に入れたのだ?」
「あたしの師匠があたしに譲ってくれました。トッポックス領内で有名な傭兵で名前はジーナっていいます」
「ジーナか、やはりその者も魔法を込めていたのか?」
「はい、師匠も普段は魔法が使えなかったので」
新たなる謎が増える瞬間であった。
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