運命の導き

魔族のレーデが狙っていた魔導具がヨナの持つ魔法の弓の可能性があることをヨナ達は話している。そんな中、思い出したかのようにダリルが話す。


「ヨナよ、その魔法の弓の事は知らんが、ジーナの事なら分かる事がある」

「本当⁉」

「うむ、彼女はそもそもグラッスの者ではなく、ルワールから流れてきた者であった」

「ルワールって、帝国に武力併合された、あの⁉」


 ヨナがルワールの名を聞いて戸惑う中、ダリルが話を続ける。


「彼女の父はとある領主に仕えており、その息子を守るために国を脱したのだ」


 ダリルの話を聞き、ジエイやウィル達が話している。


「この話は……」

「ギンの事だよな、じゃあヨナのお師匠さんって……」

「ギンさんを育てていた人の娘さんって事?」


 ジエイ達が話している中、ダリルはヨナに話の続きをしている。


「共に捕まらないように、別々の船で脱出し、コッポで合流する予定であったが、彼女と母親の乗る船はグラッスまで流れ着いた」

「じゃあ、その時に父さん達が保護したって事?」

「そうだ、母親は既に命を落としていたがな」

「そうなんだ……」


 更にダリルは意外な事実を打ち明ける。


「わしはあの時もお前と同じようにジーナに養女になる話を持ち掛けたが断られたな」

「それはどうして?」

「彼女によると『いずれ父と再会し、父と共に守らなければならない方がいるので受けられない』とな」

「そう……」


 ヨナの反応を見て、ダリルはその後ジーナにした対応を話した。


「その後は孤児院に入り、自らで傭兵への道を切り開いていったのだ」

「今の話にでた領主の息子はここにはいないけどあたしと一緒にブロッス帝国と戦ってきた奴なんだよ」

「そんな偶然、いや、これも運命の導きなのか……」

「父さん?」


 次の瞬間、ダリルはマルスの前で膝をつき、マルスに対して声をかける。


「陛下、このダリル、トッポックス領主としての最後のお願いがございます」

「何だ?申してみよ」

「我が娘ヨナに魔族討伐の任をお与え願います、以前いらしたプレツの特使の方々と共に」


 ダリルの懇願に対し、ヨナがダリルに尋ねる。


「父さん、急にどうしたの?」

「ヨナよ、お前がジーナから傭兵としてのあらゆる技や魔法の弓を受け継いだのはこの為だったかもしれん、わしにできるのはこれくらいだが」

「父さん……」

「これまでもその人達と戦ってきたなら最後まで己の役割を存分に果たしてくれ、お前はわしの、いやこの国の誇りなのだから」


 ジーナから引き継いだものは力だけでなく、様々な思いを引き継いできた。そう実感するヨナであった。

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