国王の懇願

 ガンシルが追い詰めたからダリルは領地を取り上げられたと主張するヨナであったが、そもそも同盟を頓挫させようとしたのは他ならぬダリルの意思だと主張するガンシル。そのガンシルにグラッス国王が声をかける。


「ガンシルよ、その娘の申していることが真実であるならば、ダリルの罪を見直さねばならんし場合によっては……」

「まさか私を切り捨てるおつもりですか?陛下、先代亡き後陛下をお支えになったのは他ならぬ私なのですぞ、魔族と手を組んだのも帝国の傘下になるよりは国力を維持できると判断したからなのです」

「ならば問おう、私は休戦を結ぶべきだと主張した時反対したのはそなたの意思か?」

「もちろんにございます」


 ガンシルは国王の問いかけにはっきりと答えるが、国王は更にガンシルをたたみかける。


「私もあの時はそなたの申す事にも一理あると思った。だが、あの娘、ヨナの発言を聞く限り、あの者達は何度も帝国軍と戦い、その考えを肌で感じたように思える」

「何がおっしゃりたいのですか陛下?」

「一度、ヨナや帝国側の意見としてもフィファーナ将軍の話を聞きたい、魔族とは手を切るべきだ」


 魔族と手を切るべきだというグラッス国王の声を聞いて魔物はガンシルに声をかける。


「もう良いであろう、ガンシル」

「レーデ様?」

「我らと手を切るよう主張するならそのような王など必要ない、殺してしまえ」

「し、しかし王族を殺してしまえば私は謀反人として……」


 さすがのガンシルも王族を殺すことにためらいがあったが、レーデと名乗る魔族は自らの主張を述べる。


「そんなもの、この場にいる全員を始末すれば問題はない、言い訳など後で考えればよい」

「しかし国王の死亡は大事件に……」

「その男に少しでも血縁の近い者を担ぎ上げれば済む話だ」


 レーデの発言にとうとうヨナの怒りが爆発する。


「いい加減にしなよ!人の心をもてあそんで、あんたをこの場でやっつけてやる!」

「ふっ、少し揺さぶればもろくも崩れる、そんな人間どものなんと面白い事」

「許さない、これでもくらえ!」


 人間をあざ笑うレーデに対し、ヨナは弓矢を射るが、かわされてしまう。


「ふっ、やはりお前は我らに逆らうようだな」

「当たり前だ!この国から出ていけ!」

「ガンシルの無能はしくじったが、やはりあの人質を見せしめに殺す必要があるな」

「なっ⁉」


 そう言ってレーデは手より魔法をダリル達に向けて放つ動作を見せ言い放つ。


「さあ、誰に当ててやろうか、ハハハハ!」


 レーデがそう言い終えると魔法はダリル達に放たれた。


「うおおおお!」


 叫ぶヨナは魔法の前に立ち塞がり、衝撃で身体が後方に吹き飛んでしまう!ヨナの命運は?

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