弱さと不安

フィファーナの魔導石で兵の1人の姿が魔物の姿に戻り、さらにその魔物がグラッス国王側近ガンシルを裏で操っていたことをその場にいる全員に打ち明ける。


 その話を聞いたグラッス国王はガンシルを問い詰めるが、それはグラッスを守る為だと主張する。そのガンシルの言葉を聞いてヨナはガンシルに対し吠える。


「嘘だ!」

「何⁉」

「あんたはトッポックス領を自分のものにする為に、父さんにわざとその魔物が変身した男と会話していたのを聞かせて父さんをはめようとしたんだろう!今までの話から全部仕組んでいたんだろう!」

「何だと!だがダリルめが特使を追い払おうとしたのは他ならぬダリルの意思で、お前もその片棒を担いでいるのだぞ」


 ガンシルの言葉を聞いて、ダリルがヨナに告げる。


「ヨナ、ガンシル殿の言う通り、特使を追い払おうとしたのはわしの意思だ。そしてお前にその汚れ仕事を押し付けてしまった。わしは領主としても父親としても失格だ」

「でも、父さんは全然悪くないのに、領地を取り上げられる方がおかしいよ!」

「ヨナ、妻を亡くし、後ろ盾を失ったわしは常にこの地位をいついかなることで取り上げられるかの不安に怯えていた」

「えっ⁉」


 父であるダリルの打ち明けた話にヨナは驚くが、ダリルはさらに話を続ける。


「わしの実家はしがない下級貴族で、そんなわしがトッポックス領主などをやっているのを快く思わん者も多くいたはずだ」


 ダリルの話を聞いてガンシルがダリルに対して言い放つ。


「当然だ、お前なんぞにトッポックス領主など過分な地位だ。だからこうしてわしが取り戻し陛下にご献上したのだ」

「結局あんたが自分の部下に管理させているから実質あんたが保有しているようなもんじゃないか、魔族とまで組んで忠臣ズラしてんじゃないよ!」

「わしは帝国なんぞより魔族の方がよほど話の分かる方だと思っておるぞ、そもそも前に魔導騎士団が侵攻した際に交渉の場を持とうとしたが帝国ははねのけたのだぞ!」


 ガンシルの言葉を聞いてフィファーナが反論をする。


「国力で大きく劣っておったのに同盟交渉を持ちかけるから不自然に陛下はお感じになり、そこで侵攻と調査を兼ねたのじゃ」

「結局は力で我らをねじ伏せようとしたではないか!これだから帝国は信用できんのだ!」


 ガンシルの言葉にヨナが再度吠える。


「やり方は強引だったかもしれないけど、帝国はこの世界を平和にする為に戦ってきたんだ!あんたは魔族に魂を売ってまで自分の地位に固執したじゃないか!」

「黙れ小娘!お前の父親も地位を守る為に特使を追い払おうとしたのだぞ」

「確かにそうだよ、でもあんたみたいに誰かを陥れたわけじゃない!父さんは弱い人間だったかもしれないけど、あんたみたいな卑怯者じゃない!」


 父への思いからガンシルに訴え続けるヨナ。魔物と側近からグラッスを取り戻せ!

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