嘆く父

 レーデが放った魔法に直撃したヨナは身体が吹き飛び、魔法の衝撃でヨナの後ろの壁は崩れてしまい、ヨナの肉体はその場にいる一同の目から消えてしまう。


 その様子を見たレーデが自らの考えを口にする。


「壁のがれきに埋もれたか、まあ我が魔法をまともに喰らっては生きているはずがない」


 レーデの声を聞いたダリルはレーデに対し思わず問いかけてしまう。


「な……何だと?ま……まさかヨナが死んだというのか……」

「当たり前だ、ただの人間が私の魔法を受け、生きているはずがないだろう」


 レーデの自信満々な発言を聞いて、ダリルはその場で膝から崩れ、顔を床に伏せながら涙ながらに叫ぶ。


「うおおおお!ヨナ!わ、わし……なんぞの為に……何で死んだんだ……」


 ダリルの叫びを聞いてフランツ、そしてニーも涙を流しながらヨナの死を悼んでいた。


「姉上……どうして……」

「ヨナ様……」


 その状況を信じられず、ミニルも泣き叫び、感情が溢れだす。


「う、う……うわあああん!ヨナーーーー!どうしてよ、どうしてなの!」


 ウィルも静かに悲しみの言葉がもれる。


「バカ野郎、親父さん達を助けられてもお前が死んじまったら何の意味もねえじゃねえか……」


 ジエイもこの状況に言葉が無く、フィファーナもそっと呟く。


「……」

「これは救われんのう」


 涙を流し、ひたすらヨナの名前を言い続けるダリルにグラッス国王が声をかける。


「う、ううう、ヨナ……」

「ダリル……」

「マルス陛下……」

「すまぬ、ダリルよ国王としての私の器量のなさがこのような事態を招き、結果お前の娘を死に追いやってしまった。許してくれ」


 グラッス国王マルスの思わぬ謝罪に戸惑い、ダリルは困惑してしまうが、返答をする。


「そんな、陛下、本来ならば陛下をお支えしなければならない私が自らの保身で招いた結果にございます。娘を死に追いやったのは私です」

「だが、お前を追い詰めたのも私の至らなさだ。それがお前の娘を死に追いやってしまった」


 マルスとダリルが互いの至らなさを嘆いていると、ガンシルがマルスに声をかける。


「陛下、あのような娘の死を陛下が責任を感じる必要はございません。我らに刃向かった愚かな娘のことなど、それよりもレーデ様に許しを請いましょう陛下、今ならまだお許しになるでしょう」


 ガンシルの言葉にウィルが怒りの表情で言葉を放つ。


「おい、おっさん、てめえ今何て言った?」

「愚かな娘の死など嘆く必要はないと陛下に申し上げただけだ、それが何だ?」


 ガンシルの発言にウィルだけでなくミニルも怒りを露わにする。


「あなた……人の命を何だと思っているの?ヨナはお父さんの為にここまで危険を顧みず来たのよ、それを……」

「ふん、親が愚かなら子も愚かという事だ、お前達を始末した後に仲良くあの世に送ってやる。それならあの娘も寂しくはないだろう」

「ゆ、許さないわ……あなたのような人の命を軽んじるような人は」

「俺もだぜ、ミニル。せめてヨナの望みだけは俺達で叶えてやる」


 ガンシルの発言に怒りを燃やすウィルとミニルにジエイが何かに気付き、声をかける。


「ウィル殿、ミニル殿!」

「どうしたジエイ?」

「この足音は?」


 ジエイが聞いた足音とは?

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