悪意への盾

 自らの存在が周りの人間に不幸を及ぼしてしまう。その考えに支配されたヨナに対し、グラッス国王の側近はヨナ自身そしてジエイ達を対帝国の先兵として自らの下につけば、父、弟、侍女の命の保証をするという提案をする。


 その提案を聞いたヨナは力なく言葉を発する。


「それってどっちを選んでもあたしに関わる人が不幸になるってことだよね、やっぱりあたしは存在が不幸をよんでしまうんだ」


 ヨナが突き付けられた選択に対し、嘆いているとウィルがヨナに対し強く言い放つ。


「存在そのものが不幸をよぶ奴なんているわけがねえ!そんなのお前らしくないぞ!」

「ウィル……、でも実際に……」

「確かにお前の周りで予期しない不幸があったかもしれねえ、でもそれはお前のせいじゃないし、今回のは明らかに悪意を持った奴がお前やお前の大事な人を不幸な目に合わせようとしているんだ!」

「悪意……」


 ウィルに発言に対し、ミニルも同調し言い放つ。


「兄さんの言う通りよ!それにもし本当にあなたの言う通りだとしたら、私達はとっくに帝国との戦いで死んでいるわ!」

「ミニル……、今は例え無事でも……」

「あなたが今まで歩んできたことを思えば、そう思うのも無理はないかもしれないわ。でもこれだけは言える……」


 少し力を溜めながら、ミニルはヨナに対し強く言い放つ。


「私達は決して不幸なんかじゃないわ!確かに辛いことや死ぬかもしれないと思ったこともあった、でも支えてくれる人がいるから乗り越えられた」

「そうだぜ、ヨナ、俺達がお前を悪意から守る」

「だから自分を怖がらないで、あなたは不幸をよんだりはしないわ」


 ウィルとミニルの強い激励を聞いたヨナは感じた。対等に自分と同じ目線で話す者がいてくれるとう幸せを。


「ありがとう、ウィル、ミニル、そうだね、ずっとあんた達と支え合ってきたもんね」


 ヨナが立ち上がると側近はヨナに言い放つ。


「貴様、どうするんだ?我らに従うのかそれとも……」


 次の瞬間ヨナは側近に対し弓矢を向け、言葉を発する。


「3人に指1本でも触れてみろ、その瞬間、あんたの心臓かその膨れた腹を矢で射抜いてやる」

「な、貴様、このわしを脅迫するのか?」

「あんたが最初にあたしを脅しただろう、ならそうされても文句は言えないはずだよ」

「おのれ、ならばみせしめに1人殺してやる、そのガキから殺せ」


 そう言って兵士の1人がフランツに対し槍を突きつけジエイが短剣を放とうとするがそれより早く、兵士は倒れており更に突如現れた謎の男達により、ダリル、フランツ、ニーは拘束を解かれていた。


「あれは?」


 ジエイが驚愕していると部屋の中から新たな声がする。


「見苦しいのは美しくないのう」


 声の主の正体に気付いたジエイが声を出す。


「この声は……フィファーナ将軍!」

「久しいのう、ジエイ」


 ダリル達を救出したのはブロッス帝国将軍フィファーナであった。彼女の目的とは?

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