伝承と現在

 ミッツ教団の教会の奥にある司祭の部屋でルルーとムルカはギガス達との会談内容の際にエンビデスが語ったギンがかつて邪龍を退治した剣士と魔導士の末裔であることを話していた。


「そうですか、やはりギン殿は剣士と魔導士の末裔でしたか」

「はい、司祭様のおっしゃる通りでした。それに……」


 更にルルーはギンがエイムの魔法を魔法剣に転用し、その力でギガスを打ち破ったことも話し、司祭はその事実に驚愕する。


「何と⁉それは伝承にあった魔法剣そのものではありませんか!」

「はい、以前我々はピトリのアイルでミックサック団という芝居の一団がしている伝承の舞台を観覧しましたので、ギン殿にとってはそれもヒントになったようです」

「ううむ、ギン殿はかつての剣士に引けを取らない力を秘めてるかもしれませんね」

「ですがエイム殿はさすがに4属性の精霊の力を同時には引き出せないようなので、総合的な威力は劣るかも知れません」


 ギンが秘めたる力はかつての剣士に匹敵する可能性がある一方、エイムは4属性の力は同時には引き出せない為、総合的な威力は劣るとのルルーの見解を聞き、司祭は返答をする。


「それでも武神と契約したいわば神の力を得たギガス皇帝に打ち勝てたのですから相当な力でしょう」

「司祭様、魔族が根城にしている場所についての情報は入っていますか?」

「世界各地で魔物は出現しているようですが、あなた方が遭遇したような魔物は中々姿を見せないようです」


 司祭の返答を聞き、ムルカがある懇願をする。


「司祭様、魔族はかつてのミッツ教団の祖となる集団が活動を抑止したというなら古い書物にその旨が書いてあり、彼らの根城の場所のヒントがあるかも知れませぬ」

「確かに、その可能性はありますね」

「司祭様、手の空いたもの達に積極的にそれを探らして下さい、場所の目星がつけば、連合軍を編成し一気に叩かねば」

「分かりました、教徒達に探らしてみましょう」


 ムルカの懇願を司祭が了承すると、ムルカが礼の言葉を述べる。


「ありがとうございます、我らもしばらくはここに留まるので、探りましょう、ルルー良いな?」

「もちろんです。帝国との休戦が続いている間に魔族との戦いを勝利するのが理想ですから」


 ムルカとルルーも書物を探ることを司祭に告げ、司祭が言葉を返す。


「お願いします、と言いたいところですが、あなた方は長旅から帰って来たばかりなので今日はお休みください、どの道1日2日で見つかることではないですしね」


 1つの戦いが終わってもまだ続く戦いがある。だが今は休息の時である。

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