帰る場所

ギンとエイムがミッツ教団の馬車に乗ってプラナがいるミッツ教団が運営する孤児院に向かうと、ルルーが他の仲間に呼びかけている。


「じゃあ、みんな、ゆっくり過ごしていてね。私とムルカ様は司祭様にお話があるから」


 ルルーの呼びかけにブライアンが応じる。


「おう、そうさせてもらうぜ」


 ブライアンの声を聞いて、ルルー、ムルカ、司祭は奥の部屋へと消えていく。


 ルルー達が奥の部屋へと行くと、ヨナが言葉を発する。


「ゆっくり過ごしていいっていっても、何をする?」


 ヨナの言葉を聞いて、ブライアンが言葉を発する。


「とりあえず、俺は1度防衛兵団に顔を見せてくる」

「っていうかいいの?あんたをはめた奴がいたところじゃないの」

「そいつはもういねえし、ちゃんと処分を受けたうえで復帰した奴にも文句はねえよ、ま、今更仲良くしようとは思わねえがな」

「あんた、強いね。中々そんな考えにはなれないよ」


 ヨナの言葉に対し、ブライアンが返答をする。


「せめてよ隊長とマイクには無事に帰って来たことは知らせてえし、前にエイムが助けたマリンって子の兄貴にもエイムが無事帰って来たことを伝えてやらねえとな」

「そんなら行ってきな、あたし達はここで待ってるからさ」


 ヨナの言葉を受け、ブライアンが教会から出ようとすると、ウィルとミニルが声をかける。


「俺達もその兵舎に行っていいか?俺達はその隊長って人に会ったことないし」

「ブライアンさん、連れて行ってください、落ち着いたらニリにも来てくださいって言いたいので」

「仕事熱心だなお前は」

「少しづつだけど平和が近づいているし、また私の仕事だって必要になるかもしれないわ」


 ウィルとミニルの懇願を聞いて、ブライアンが返答をする。


「じゃあ、もう着いてこい、あんま迷惑かけんなよ」

「お前がそれを言うのか」


 やり取りをしながらブライアン達が教会を出ると、ヨナがぼそっと呟く。


「何かいいなって思う……」

「ヨナ殿?」

「みんなはそれぞれに帰る場所がある、あたしと同じだと思ったギンにもだよ。でもあたしとあいつらはどこにも帰る場所がないんだよ」


 ギンは妹のプラナと再会したことで帰りを待つ人ができたが、自分や傭兵達には帰る場所も帰りを待つ人もいないことを寂しげに呟き、更に言葉を続ける。


「まあ、戦いが終わればあいつらと行商をしながら世界を回ってその合間に野盗や魔物を退治するのも悪くないか。結局あたし達にできるのはそれくらいだしね」

「ヨナ殿、コッポのギルドに所属する手もありますし、今回の功績でブライアン殿がいた兵団にも入団できるかもしれませんし、スールで諜報員のお役目もあります。私から推薦しましょうか?」

「ジエイ、コッポのギルドはともかく、兵団とか諜報員とかに所属するのはあたし達のガラじゃないよ、気持ちは嬉しいけどさ」


 仲間達に帰る場所があるが、自身や傭兵達にはなく、どこか寂しげな気持ちがあるヨナであった。

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