お帰りとただいま

スップのミッツ教団の教会より馬車に乗りギンとエイムは、ミッツ教団が運営する孤児院へと向かっていた。


 そこでギンの妹であるプラナがそこで過ごしている子供の世話の手伝いをしているというのだ。ギン達はこの少しの時間を利用してプラナに会う為に今、孤児院に近づこうとしている。


 孤児院に近づいていくと、馬車を御している教徒がギン達に声をかける。


「ギン殿、エイム殿、まず私が孤児院の責任者であるマザーに話をしてきます。許可が下りればギン殿達も孤児院に入れますので」

「分かった。ところで孤児院のマザーや世話人、子供達はプラナが元は帝国の騎士であることは知っているのか?」

「マザーには司祭様から知らせてくださりましたが、子供達は知らないでしょう。やはりどのような影響を及ぼすか分からないので」

「何から何まで負担をかけてすまない」


 ギンの謝罪の言葉を聞いて教徒は返答をする。


「ギン殿、本来なら命を奪い合ってたあなたとプラナ殿がこうしてご兄妹として再会されたのはプレツとブロッスの友好の証になるかもしれません。子供達も今は理解できなくとも、理解できるように努めるのが我らの責務であると思います」

「そうですね、私もそう思います」


 エイムが教徒の意見に同調すると、教徒は馬車を止めて、孤児院内に行く前にギン達に声をかける。


「それでは行ってまいります」


 教徒がそう言うと、孤児院内に入っていき、しばらくすると気品のある老女と共に孤児院から出てきて、老女がギン達に声をかける。


「ようこそ、おいでくださいました、私はこの孤児院のマザーをさせていただいております」

「初めまして、自分は傭兵のギンです、特使殿達の護衛をさせてもらっています」

「私は魔術師のエイムです」


 ギンとエイムも自己紹介を終えると、マザーが返答をする。


「司祭様より、お話は聞いております。ムルカやルルーがお世話になっております」

「いえ、それで、あのプラナは……妹はどうしてますか?」

「プラナさんなら今、外で洗濯物を干していますよ。お会いになりますか?」

「いいんですか?」


 ギンの問いに、マザーが返答をする。


「その為にいらしたのでしょう、ご案内します」


 そう言ってマザーはプラナが現在洗濯物を干している場所にギン達を案内し、プラナの姿を目にしたマザーがプラナに声をかける。


「プラナさん、お兄さんがお会いしたいとおいでになりましたよ」


 その言葉に一瞬戸惑いと驚きをおぼえるプラナであったが、ギンの姿を目にすると思わず駆け寄り、ギンの胸に抱きつく。


「兄さん!本当に兄さんなの⁉」

「あ、ああ……プラナ?」

「ごめん、いきなり。でもすごく不安だった。兄さんが帰ってこなかったらどうしようといつも不安で……」

「プラナ、こうして俺は帰って来たんだ、お前と話す為にな」


 ギンの言葉を聞いて安心したプラナは笑顔でギンに対し、言葉を呼びかける。


「お帰り、兄さん」

「ただいま、プラナ」


 まるで永遠に続くかもしれない不安から払拭されたプラナは穏やかな表情をギンに見せる。

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