皇帝と騎士

乱戦の中ウィルの短剣が、エンビデスの身体をかすめ、僅かではあるが傷を負わせることに成功する。


 そんな時、手負いのカイスが現れ、エンビデスに対し後方に下がるよう言い放ち、エンビデスが返答をする。


「カイス⁉何を申しておる、下がるのはお前の方だ」


 エンビデスの言葉を聞いてからギンもまたカイスに言葉を発する。


「カイス!お前は一体何を考えているんだ!そんな事をすれば本当に死んでしまうぞ」

「構わぬ!私の命はすでに陛下に捧げている」


 ギンとカイスのやり取りに、ギガスが口を挟む。


「カイスよ、余が負けることはあり得ぬ。それに、主には帝国の未来を導く責務があろう。今は戦う事より、怪我を治すことに専念せよ」

「いえ、陛下。この戦いは帝国の命運を決める戦い。陛下を危険にさらし、私が安全な場所にいることはあってはならぬことです」

「カイス……」


 カイスに遅れるが、トーラスも大広間に入室する。


「申し訳ありません陛下!私からもお願いします。カイス様をこの戦闘に加えてください!」

「トーラス、主までもが……」

「カイス様は私が命に代えてもお守りします。ですからどうか……」

「……ふ、それが主らの忠義か?カイス、トーラス」


 ギガスの問いに、カイス、トーラスが声をそろえて返答をする。


「はっ!」

「ならば、もう何も言うまい。存分に戦うがよい」

「はっ!」


 ギガスがカイスとトーラスの戦闘参加の許可をするとエンビデスがギガスに問いかける。


「陛下、よろしいのですか?」

「余も武人、バンスも武人、やつも我らと同類という訳だ。エンビデスよ、怪我をしたのなら下がって構わぬぞ」

「いえ、陛下。この身、果てようとも最後までお供させて頂きます」

「ふっ、余は幸せ者であるな」


 ギガスとエンビデスがやり取りをしている中、カイスがトーラスに礼の言葉を述べている。


「トーラス、感謝するぞ、私の後押しをしてくれて」

「礼のお言葉なら勝ってからにしてください」

「ふっ、そうだな。では……いくぞ……」


 怪我を押して戦闘しようとするカイスに対し、エイムが大きな声で言葉を発する。


「止めてください!これ以上戦えば本当に死んでしまいます!」

「私は……陛下に命をささげているのだ!ここで身が果てようとも後悔しない」

「あなたが死んでしまえば、プラナさんが悲しんでしまいます。それが分かってて自分からわざわざ死を選ぶんですか⁉」

「戦いとは生きるか死ぬかだ、プラナもその覚悟で臨んできたのだ」


 プラナを思い、何とかカイスを思いとどまらせようとするエイム、言葉は届くのか?

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