新しい姿

 ミニルとプラナがプラナの為の新しい服の購入をしている間にギン達はウィル達の船にたどり着いた。


 ウィルは最初に船に乗り込み、船番をしているリンドに声をかける。


「おーーい、リンドーーー」


 ウィルの呼ぶ声に反応してリンドがウィルに返答をする。


「坊ちゃん、帰っていやしたんですね」

「まあな、それよりお前に頼みたいことがあるからちょっと船から降りてくれるか」

「俺にですかい?分かりやした」


 ウィルの頼みに応じてリンドは船から降り、船の外で待っているギン達を見て、更にウィルに声をかける。


「それで俺に頼みてえことって何ですかい?」

「今、ミニルが一緒に服を買いに行っているんだけど、実はこの国でギンの妹を発見したんだけど、これから俺達は帝国に行かなきゃなんねえんだ」

「帝国に行くんですかい⁉だけど。それとギンの旦那の妹さんとどういう関係があるんですかい?」

「さすがに帝国まで連れて行くわけにはいかねえから、そこでお前と船員数名でその子をプレツのスップにあるミッツ教団の教会まで送って欲しいんだ。いまルルー様が司祭様にその文を送っているからそこは大丈夫だ」


 ウィルの説明を一通り聞くが、不思議な点もある為、リンドはウィルに尋ね直す。


「坊ちゃん、俺達がプレツまで送るのは構わねえんですけど、どこでギンの旦那の妹さんを見つけて、いやそれ以前にどうして妹さんと分かったんですか?」

「ああ、それはな……」


 ウィルが説明しようとするが咄嗟にジエイが説明に加わる。


「私が説明しましょう、リンド殿もこの街にいらしたなら分かっておるでしょうが、ミックサック団という芝居の一団がいたのです」

「そういや、そんな一団がいやしたね」

「その団員の1人がギン殿の妹君だったのです」

「だけど、どうして分かったんですかい?」


 リンドの問いに、ジエイはエイムにアイコンタクトをして、エイムも何かを察し、ギンに耳打ちする。


「ギンさん、ペンダントを出してもらえますか」


 エイムに促されてギンは服の中からペンダントを取り出し、エイムに渡す。ペンダントを受け取るとエイムはリンドにペンダントを見せる。


「これはギンさんのペンダントなんですけど、これと同じ物を妹さんも持っていたんです」

「まさかそれだけで分かるんですかい?」

「いえ、実は私の魔法でこのペンダントからご両親の思いを読み取り妹さんにも思いを魔法として届けたんです」

「すげえですねえ、まあそれなら合点はいきました」


 リンドがエイムやジエイの説明に納得していると、ルルーとムルカがやってくる。


「お待たせ、あれ?プラナは?それにミニルも?」

「ミニルならプラナを連れて服を買いに行きましたよ」


 ウィルの説明で、帝国軍の装備では隠し通せないことをルルーも察し、自身の中で納得する。


 そんな時にようやくミニルとプラナもやってくる。


「みんなお待たせ、プラナさんの新しい姿をとくとご覧あれ」


プラナをこれまで戦場でしか見たことのないギンや仲間達は町の女性が着るような一般的な服装を見て、プラナから年相応の少女らしさを初めて感じたのである。

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