触れ合うからこそ
ミニルの見繕いでプラナは、街で過ごす、一般的な女性が着るような服を着て、ギン達の前に姿を現す。
そこにいるプラナはおおよそ騎士をしていたことなど想像の付きにくい姿であり、リンドが言葉を発する。
「こちらがギンの旦那の妹さんで、はえーーっ、結構な美人じゃねえですかい、坊ちゃん、嫁さんにどうですかい?」
半ば冗談ではあるだろうが、リンドはウィルに対しプラナとの結婚を勧めるが、そこにミニルが口を挟む。
「ダメよ、リンド。プラナさんには好きな人がいるんだから」
「ああ、それは余計なお世話しちまいましたね」
プラナがミニル達の発言に照れと戸惑う様子を見たルルーは話題を咄嗟に本題に戻す。
「とりあえず、私達はこれから帝国へ行くので、リンドさん達には、プラナさんを民間船でプレツまでお願いします。既に司祭様に文を送っているのでニリまでお迎えしてくれます」
「ああ、分かりやした。それじゃあ俺は乗船券を買ってきやす」
ルルーより説明され、リンドは民間船に乗る為の乗船券の購入に向かっていく。
リンドが離れたタイミングを見てブライアンが先程のルルーの発言に疑問が浮かんだので尋ねてみる。
「なあルルー、なんでおっさんにスップまで届けてもらわねえんだ?わざわざミッツ教徒をニリまで来てもらうのは手間がかかるんじゃねえのか?」
「確かにそれはあなたの言う通りだけど、ミッツ教団の馬車で直接教会まで行くのが、プラナの顔を誰にも見られずにたどり着く唯一の方法よ」
「そっか、多分隊長やマイク達は覚えているだろうしな」
「ええ、教会に着いてからは司祭様にお任せするほかないわ」
あくまでもスップの住民をなるべく刺激しないことが結果的にプラナや住民の為と考えるルルーは、ミッツ教徒にニリまで迎えに来てもらうのが最も安全であると考えている。
ブライアンとルルーのやり取りの最中にギンはプラナが持っている大きな袋が気になり、声をかける。
「プラナ、その袋は?」
「ああ、これ、私が着けていた装備よ。あの服屋じゃ引き取ってはもらえなかったし」
「それならこれは俺達が預かっておく」
「ありがとう、兄さん達が持ってくれてるなら安心だわ」
ギンがプラナより装備の入った袋を受け取ると、ヨナがプラナに声をかける。
「待ちなよ、これを持っていきな」
「これは?」
「投げ用の短剣だよ。さっきジエイに頼んでもらったやつだ。護身用に使いな」
「ありがとうございます、わざわざ私の為に」
プラナより礼の言葉を述べられるとヨナは謝罪の言葉を言う。
「さっきは言い過ぎて悪かったよ。兄貴と惚れた男との殺し合いなんて耐えられないだろうし、あんたはあんたでちゃんと考えていたんだよね」
「いえ、兄のくれた命を捨てようとした私が悪いのは明白です。ただ私の心が弱かっただけで」
「だとしても、あたしも言い過ぎたのは確かだし。それに今のあんたはちゃんとそこも乗り越えているよ」
「それは兄や皆さんが私に生きる意味をくれたからです。帝国の騎士としてしか生きる方法を知らなかった私に」
ギンやギンの仲間との触れ合いからプラナもまた新しい道を歩もうとしている。
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