アイルに着いて

 ギン達が乗る馬車は進んで、ようやくアイルの港町に到着した。


 アイルの港町に到着するとそれぞれ馬車から降りて、ルルーが一同に呼びかける。


「とりあえず、まず私とムルカ様は司祭様への文を書いてプレツまで届けてもらうから、みんなは先に船に行ってて」

「分かった」

「じゃあ行ってくるわ。ムルカ様、参りましょう」

「うむ」


 そう言うとルルーとムルカは文を届ける為、港の郵便所へと向かう。


 ルルー達が郵便所に向かうと、ウィルが一同に船着き場へ向かうよう声をかける。


「よしじゃあ早速、俺達は先に船まで行こうぜ」

「ちょっと待って兄さん」

「なんだよミニル?」

「プラナさんの格好よ、この格好のまま行ってもさすがにリンド達に帝国の騎士であることを隠すのは無理があるわ」


 ミニルの促した先にいるプラナはブロッス帝国軍に所属していた時の装備をまだ身につけている為、帝国の騎士であることを秘匿するには困難であることをミニルがウィルに訴えている。


「あ、そっか、そんじゃあどうする?」

「とりあえず何かプラナさんの新しい服を用意しないと、街の服屋で私が見繕ってくるわ。プラナさん、一緒に行こう」


 ミニルの誘いに戸惑うが、プラナはミニルと共に服屋へと向かう。


「あ、は、はい」

「それじゃあ私達行ってるから、兄さん達は先に船に行ってて」


 ミニルとプラナが服屋へ向かうと、ギン達は自分達の船がある船着き場へと向かっていく。


 その途中でエイムがギンに声をかけている。


「ギンさん、帝国に行けば、またカイスって人と戦うことになりますが、どうするんですか?」

「俺としてはもちろんプラナの望みを叶えてはやりたい。だが、正直戦いは避けられないだろう」

「プラナさんの時より話すのは難しそうですね」

「俺の全てをあいつにぶつける。それで無理やりでも話し合いに持ち込む。これしかないか」


 ギンはあくまでもカイスとは剣を交える必要があることを話し、そこから多少強引に話し合いに持ち込む方法をエイムに伝える。


「ダメだと思うか?」

「いいえ、ギンさんとあの人の間でしか通じないこともあると思うので、私は、私達はギンさんがそうできるようにお手伝いするだけです。ただ……」

「ただ、何だ?」

「ギンさんがプラナさんを悲しませたくないように、私達もプラナさんを悲しませたくないんです」


 エイムの強い言葉を聞き、ギンは返答をする。


「そう思ってくれるとあいつも嬉しいだろう」

「折角仲良くなれたんですから、これからもプラナさんには笑顔でいてもらいたいんです」


 カイスとの話し合いは困難をきわめるが、それでもプラナの為にやらねばと決意するギン、そしてエイムであった。

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