拾った命

 帝国に向かう前にルルーよりプラナをプレツのミッツ教団の元に送り届けるという案が出たが、現状人員を割く余裕がないことをブライアンより言われると、ルルーは方法はあると言い放つ。


 ブライアンにそう言うと今度はウィルに声をかける。


「ウィル」

「はい」

「リンドさんと船員さん数名でいいから、プラナを一度スップのミッツ教団の教会まで送り届けて欲しいの」

「でも俺達はどうやって帝国まで行くんですか?」


 ウィルの問いに対し、ルルーが返答をする。


「心配はいらないわ。私達はあなた達の船で帝国へ向かい、リンドさん達はプレツのニリ行きの民間船でプラナを送り届けてもらうわ」


 ルルーの問いにウィルより先にブライアンが強く反応をする。


「そっか、その手があったか、何だよルルー、お前頭いいじゃねえか」

「こ、これくらいで褒めたって何もでないわよ」

「別にケチなお前から何かを期待なんかしてねえよ」

「ケチとは何よケチとは」


 ブライアンとルルーのちょっとした言い合いを見たプラナが近くにいたエイムに尋ねている。


「お2人はいつもあんな感じなんですか?」

「ええ、まあ、でもあれで仲はいいんですよ」


 ブライアンとルルーのやり取りの間にウィルが入って、了承の言葉を告げる。


「分かりました、じゃあアイルに着いたらリンド達にもプラナの事を説明しますよ」


 ウィルの言葉を聞いてムルカが口を挟む。


「待て、ウィル殿、リンド殿達にはまだプラナ殿の事は伏せておいた方が良いとは思うが」

「どうしてです?何も説明せずにあいつらにプレツまで送り届けてもらうんですか?」


 ウィルの疑問に対し、ルルーが答える。


「リンドさん達はプレツの民だし、プラナが帝国の騎士だと知るとさすがに抵抗があると思うの。とりあえずギンの妹である事だけは話しておきましょう」

「なんだろう、俺はリンド達を騙しているようで気が引けますね」

「ごめんね、でもこれはデリケートな問題だし、今はおおっぴらにすることでないわ」


 ルルーはプラナが抜けたとはいえ、帝国の騎士であった事実は無視できないことであり、プレツの民であるリンドや他の船員にとっては抵抗がでる恐れがある事を危惧して、とりあえずプラナの素性はできうる限り秘匿するのが良いと考えている。


「幸い、リンドさんはプラナの顔を知らないし、リンドさんにお願いするほかないわ」

「分かりました、とりあえずリンドにはギンの妹である事だけは話しておきますか」


 このやりとりを聞いていたプラナがルルー達に謝罪の言葉を述べる。


「申し訳ありません、あの、ご迷惑がかかるようなら私はやはり捕虜として……」

「大丈夫よ、ミッツ教団の司祭様ならあなたを悪いように扱わないし、あともう少し自分を大事にして」

「えっ?」

「さっき、自分で言ってたじゃない、ギンが拾ってくれた命だって、あなたに何かあったらギンが悲しむし、それに……」


 ルルーは少し、言葉を溜めてからプラナに対し言い放つ。


「この戦いでカイスが生き残っても、あなたの思いを伝えることもできないでしょ」

「えっ?はい」


 プラナが帝国の騎士だったことは重くのしかかる。だが、ルルーはそれでもプラナはギンの為、何よりプラナ自身の為に生きていて欲しいと願うのであった。

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