兄妹の距離感

 ギン達はブロッス帝国へと乗り込もうとするが、その前にギンの妹であるプラナをプレツに送り届ける為に、アイルの街で待つ船番をしているリンドの元に向かおうとしていた。


 改めて馬車に乗り込み直して向かおうとする際にムルカがギンにある提案をしている。


「ギン殿、私が馬車を御すから貴殿は馬車の中でプラナ殿と話しているとよい。まだアイルまでは時間がかかるからな」

「いいんですか?」

「構わぬ、久しぶりに会ったのだ。互いに色々あるだろう」

「ありがとうございます」


 ギンが礼を言うと馬車に乗り込んでいく。


 ゲンジの馬車を御すために手綱を持っているヨナがその様子を見ており、ジエイに声をかけられる。


「ヨナ殿、いかがなさいましたか?」

「あっ、ごめん。すぐに発つからジエイも馬車に乗って」

「もしや、ギン殿達のことが気になるのですか?」

「そうだね、やっぱりエイムの言うように少し言い過ぎて悪かったかなって今になって思うよ」


 ヨナは今になってプラナに辛辣な言葉を浴びせた事で自己嫌悪に陥り、その心情をジエイや、同じ馬車に乗るウィルとミニルに話す。


「考えたらプラナはあの時は自分の兄貴と自分の惚れた男が殺し合いをする。そんな状況に耐えきれなかったんじゃって思うよ」

「ですが、それは自らの命を投げ出していい理由にはなりません。あなたがプラナ殿に言った事は間違いではありません」

「そうだぜ、まず生きてなんぼだからな」

「自分の命を大事にできない人が他の人を大事にできないからね」


 ジエイ達より励ましの言葉を受けたヨナは礼の言葉を述べる。


「ありがとうみんな、そう言ってもらえると少し気が楽になったよ」

「どうしても気が済まないのならアイルについてから謝罪しても良いでしょう」

「そうするよ」


 ヨナがそう言うとジエイは馬車に乗り込んでいく。


 こうして2台の馬車はアイルに向けて動き出していく。


 ループの馬車の中ではギン、エイム、ブライアン、ルルー、そしてプラナがいるが、ギンとプラナは互いに話しかけるタイミングを掴めないでいた。


 その動きをじれったく感じたブライアンが思わず声をあげる。


「ああ、もうじれってえなあ!ムルカの旦那が気を遣ったから俺達も気を遣ってしゃべらねえようにしてたのに、何で一言も話さねえんだよ⁉」


 ブライアンが叫びだすとルルーがブライアンをなだめる。


「落ち着いてブライアン、いきなり2人だけで話すのはさすがに無理があったんじゃない。兄妹といってもずっと別々だったし、さっきまで敵同士だったわけだし」

「それは分かっているけどよ」


 ブライアンがぼやくとエイムがブライアンとルルーに声をかける。


「焦らなくても、お2人はきっと普通に話せるようになります。私達はそれを見守ればいいと思います」

「そうだな、俺達がじらすのもなんだな」

「ムルカ様はきっと、とりあえずまず2人が一緒にいる時間を作ってくださったのよ」


 仲間に見守られながらこの兄妹は少しづつ距離をつめようとしていた。


 

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