兄妹の再会

 プラナを憎しみから解放する為にギンは自らを斬れば良いとプラナに呼びかける。ところがプラナはエイムの魔法で見た映像が頭の中に浮かび、それに戸惑い剣を投げ捨て叫びだす。


 それに気づいたギンはプラナに対し声をかける。


「プラナ、どうしたんだ?」

「……私……、確かに生まれた家のことは覚えていなかった。でも懐かしかった」

「懐かしかった?」

「うん、さっき頭の中に浮かんだの。赤ん坊だった私の手を優しく握る子供がいた。それってあなたなのかな


 プラナの言葉から自らを兄と呼ぶ声にギンは驚き、思わず尋ねてしまう。


「今、俺の事を……」

「だって、そうでしょう、あなたは私にとって兄さんなんでしょう」

「だが、お前は俺を憎んでいた。それにバンス将軍の事も……」


 ギンは自らがプラナの慕うバンス将軍の命を奪った事を言わんとするが、プラナがギンの言葉を遮り自らの心情を話す。


「違うの、私は物心ついた時から他家の子供だと教えられ、冷たい扱いを受けたわ。魔導騎士団に入るまでは孤独だったわ。そんな風にした私の本当の親を憎んでいた。それは事実よ」

「それなら何故、俺を斬らなかったんだ?」

「さっきの魔術師の人の魔法で自分が愛されていることを知った。でもそれを認めると今までの自分を否定することになる」


 プラナは両親に愛されていることを知りながらもそれを肯定できずにいたことを打ち明け、更にギンに思いのたけを話す。


「だけど、目の前の兄さんは私の幸せを願って自らが斬られる覚悟で憎しみから解放しようとしてくれた。私が間違っていたことに気付かせてくれたの」

「プラナ……」

「兄さんが悪くないことだって分かってた。結局私は兄さんを憎む口実にバンス将軍を利用していただけよ。こんなうす汚い……」


 プラナが言葉を言い終える前にギンは叫びながら遮る。


「違う!憎しみ、恨み、絶望、妬み。どんな人間でもそんな感情に囚われてしまうことはある」

「兄さん……」

「だが、それを乗り越えられる強さを持つのもまた人間だ。お前はそれを乗り越えたんだ」

「だけど、私。……何度も……兄さんのことを……殺そうと……」


 涙の止まらないプラナをギンがそっと抱擁して言葉をかける。


「もういいんだ、俺はお前とこうやって生きて会えた。それで十分だ」

「兄さん…う、ううう。ごめんなさい」


 まるでプラナは子供のように泣き、ギンはそっと抱きしめている。その様子を見たエイムがそっと呟く。


「ギンさん、良かったです」


 泣き止んだプラナはギンの手を離れてギンに告げる。


「ありがとう兄さん、でも私けじめをつけないと」


 プラナの言葉の意味とは?

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