騎士プラナの死

 ギンとプラナ、離れ離れになっていた兄妹はようやく再会ででき、互いの思いを話すことができた。だがプラナはけじめをつけるという言葉をギンに対して言い、ギンが言葉の意味を尋ねる。


「プラナ、けじめをつけるとはどういうことだ?」

「兄さん、確かに私は養子に出された家では冷たくされた。でもそんな私を魔導騎士団に引き上げてくれたギガス陛下とカイス様には恩義があるの。だからこれまで帝国の為に戦ってこれた」

「だから、どうするんだ?」

「私は兄さんを斬りたくない。だけど帝国に刃も向けたくない。だから……さよなら」


 突如涙を流しながら、別れの言葉を告げたプラナ。その言葉にギンは動揺し、真意を尋ねる。


「どういうことなんだ⁉何故そこで別れの言葉を……」


 そのままプラナはギンに背を向けてブライアン達と対峙をしているカイスの元に向かい、カイスに声をかける。


「カイス様、お話がございます」

「プラナよお前は斬れる敵を逃したそれが何を意味するのか理解しておるのか?」

「もちろんでございます。兄とはいえ、私は帝国に敵対する者を逃し、結果、利敵行為を行いました。その責は負います。どうか私をお斬りください」


 プラナは自らカイスに対して斬るよう願い出て、その言葉を聞いたギンはプラナに対して叫ぶ。


「プラナ!どうしてお前が斬られなくてはいけないんだ⁉そんなことをする必要はない!」

「ううん、帝国軍人としてこれだけは守らないとダメなの。でも最後に兄さんと話せてうれしかった。ありがとう」


 プラナの言葉を受け入れられず、ギンは涙を流しながらもプラナに対して訴え続ける。


「最後なんて言わないでくれ!せっかくやっと会えたのに、ま……た、俺を……1人に……するのか……」

「兄さんは1人じゃないわ。兄さんの為に力を貸してくれる人がいて、兄さんの為に泣いてくれる人がいる。私がいなくても大丈夫よ」

「プラナ……」


 プラナは周りを見渡しギンの仲間に言葉を告げる。


「皆さん、私がこういう事を言える立場ではありませんが、どうか兄をよろしくお願いします」


 一同は戸惑いながらもプラナの言葉を聞くと、プラナはカイスの前に立つ。


 そのまま無言でカイスはプラナに対し剣を振り下ろすそぶりを見せ、ギンは制止に走る。


「やめろーーー!カイスーーー!」


 その言葉を気にするそぶりもなく剣を振り下ろすが、プラナの髪をわずかに切るにとどまり、その場にいた全員が一瞬あっけにとられる。


 剣を鞘にしまうとカイスは言葉を発する。


「騎士プラナはここに死んだ。そこにいるのはただ兄を思う妹だ」

「カ、イス……様」


 更にカイスはギンに対して言い放つ。


「ギンよ、この女に免じ、この場は見逃そう。だが次はこうはいかん、残された時間を悔いなく過ごすのだ」

「カイス、感謝する。妹を斬らなかったことを」

「私はただ敵でない者を斬らないという騎士道精神にのっとったまでだ。全軍撤退だ!」

「はっ」


 そうしてカイス達魔導騎士団はこの戦場をあとにした。


 緊張の糸が切れたのか、プラナはギンの胸に抱きつき、涙を流しながらギンに声をかける。


「兄さん……私、生きていいんだ、兄さんとこれから過ごしていいんだ」

「ああ、やっと、やっと俺達は兄妹として過ごせるんだ……」


 ギンも涙を流しながらプラナに再会の嬉しさを話す。


 騎士プラナは死んだ。これからプラナはギンの妹として生まれ変わり、新しい道を歩もうとしていた。


 ギンもまた妹の幸せを身近で見届ける。本当に望んだ道へと歩もうとしている。

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