兄妹の形

ギンが親から渡されたペンダントを借りたエイムは魔法でそのペンダントに託されたギンの両親の思いを知り、プラナの事を忘れずにいたことをギンに伝えた。


「父さん達は妹の事を忘れていなかったんだ」

「ええ、例え自分達の事が知られなくても妹さんの為に贈り物を続けていました」

「エイム、この事をあいつが知れば、もしかすると……」

「はい、お2人が兄妹に戻れるかもしれません」


 ギンとエイムがやり取りをしているとブライアンが口を挟む。


「ああ、その話自体は良かったし、水を差すつもりはねえんだが、この話をあいつが信じるかどうかが重要なんじゃねえのか?」


 ブライアンの疑問に対し、エイムが返答をする。


「ブライアンさんのおっしゃるように、この話をしても信じてもらうのは難しいでしょう、ですがこの魔法にはもう1つ使い道があるんです」

「もう1つの使い道?」

「私が読み込んだこのペンダントへ込められた思いを魔法として放つことができるんです」

「何だって⁉そりゃあすげえぜ」


 エイムは更にこの魔法についての説明をする。


「ですが1度放つと、思いを魔法として放つことは2度とできません。もちろん、ペンダントからもう1度思いを読み込むこともできないんです」


 エイムの話を聞いて近くにいたルルーがエイムに話しかける。


「つまりチャンスは1回しかない、その魔法をいかにプラナにかけるかって事ね」

「はい、これは攻撃魔法ではないから魔力障壁で防がれることはありませんが、それでも身体から大きく離れると無駄撃ちになってしまいます」


 エイムの話を聞き、ギンは強く言葉を放つ。


「エイム、お前がここまでしてくれたんだ。絶対に魔法をかけるチャンスは作って見せる。だからお前はその魔法をかけることに集中してくれ」

「ギンさん、はいお2人が兄妹に戻れるように頑張ります」


 ギンとエイムのやり取りの中ウィルとミニルも声をかける。


「2人だけで盛り上がんなよ。俺達だってやるぜ」

「兄妹で殺し合わなきゃいけないなんておかしいわ。こんな兄でも私にとってはたった1人の兄だし」

「こんなとは何だ、こんなとは」

「何よ、こんな兄でも大事って意味で言ってるのに突っかからないでよ」


 ウィルとミニルが突然兄弟げんかを始めた為、少しギンは考え、エイムが声をかける。


「ああ、また始まっちゃいましたね。ん?ギンさん、どうしたんですか?」

「いや、確かに殺し合うより、こうやってウィルとミニルみたいに俺達も過ごせればと思ってな」

「そうですね、でもギンさん、ケンカは程々にしましょうね」

「そういう意味じゃないんだけどな……まあいい」


 ギンにとってウィルとミニルは自身が知る兄妹の形だ。彼らのように少しはケンカもありながらも互いを思いやれる。そんな兄弟の形を目指して。

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