2つの涙

 アビィとの激闘を制したギンとエイムであったが、速度強化の魔法を多用したことで疲れ果てたギンはその場に座り込み、エイムもギンの目線に合わせるよう近くに座る。


 そしてギンはエイムに話を始める。


「エイム、俺がお前のお父さんから聞いたことを話す」


 ギンはエイムの育ての父であるトールより聞かされたことを話した。


 ボースの襲撃が近隣の街であり、その最中にトール達がエイムを拾ったことを打ち明けた。


「俺が知っているのはここまでだ」

「はい、そしてさっきの魔術師が言ってました。私はそのボースの魔術師の子だと」

「やはりそうだったのか、俺のせいで連れ去られただけではなく、先にその話を聞かされて幾度も辛い思いをさせてすまなかった」


 ギンの謝罪の言葉を聞いてエイムが言葉を返す。


「違います、私が捕まったのは私の不注意です。それに、ギンさんもお父さんから私の話を聞かされてお悩みになったと思います」

「エイム……」

「まったく、お父さんもひどいですね、な、ん……で、私に、じゃ、な……くて、ギンさん……に……」


 長時間帝国軍に身柄を拘束されていて張り詰めていた気持ちが切れて、力が抜けたエイムは涙がとまらずにいた。


「どうして、どうして……うっ、うっ。わああああん!」


 エイムの感情があふれ、大号泣となった。様々な思いがエイムを襲い、涙が止まらないでいた。


「わああああん!」


 その後もエイムは泣き続ける。ギンにはもはやかける言葉がなく、泣き止むのを待つ他なかった。


 エイムの泣き声が小さくなっていくと、ギンはエイムに声をかける。


「エイム、落ち着いたらみんなの所に帰ろう」

「……はい……」


 少し時間はかかるがエイムは落ち着きを取り戻し、ギンに声をかける。


「ごめんなさい、もう大丈夫です」

「本当に大丈夫か?」

「いつまでもこうしているわけにはいきませんから」

「それなら行こう、歩けるか?」


 ギンの気づかいにエイムは言葉を返す。


「ありがとうございます、疲れてはいますが歩けます」

「それじゃあ行こう」


 ギンに促されてエイムは歩き始め、歩きながら2人は会話をする。


「正直、まだ頭が混乱していてこの事実をどう受け止めればいいかは分かりません。私の本当の両親も亡くなっているようですし」

「……」

「だけど、ギンさんが言ってくれた事が全てだと思います」

「俺が言った事?」


 目を潤ませながらエイムはギンに対して言葉を述べる。


「私とコッポの村のお父さんとお母さん。私達は親子だって言ってくれた事、私はそれを信じたいと思います」

「エイム、やっぱりお前は強いよ」

「そんなことないです、なんか今も泣きそうだし、そんな私が……」

「そうじゃない、泣かない人間が強いとは限らない。その逆もそうだ。それにお前はいつも誰かを思って涙を流してた。今日みたいに自分の為に泣くのもいいんじゃないのか」


 ギンの言葉にまたしても涙が溢れる。今度は悲しみの涙ではなく、嬉しさからくる涙だ。


「はい、私、今のお父さんとお母さんに拾ってもらって、ギンさん達にも会えて、本当に、本当に良かったです」

「それは、俺も、みんなも思っている。だから早く帰ってやろう」

「はい!」


 辛い事実、それをしっかり受け止めるのは時間がかかるかも知れない。


 だけどエイムには支えになってくれる人達がいる。だからこの先もしっかりと歩みたいと思ったのだ。その人達と一緒に。

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