自らの意思

 部下を全て敵の迎撃に回したアビィの隙を突き、抵抗を試みたエイムに遂に希望が訪れていた。


「待たせたな、エイム」

「ギ、ギン……さ、ん」


 エイムの前に姿を現したのはギンであり、ようやく追いついたのである。その事に疑問を抱いたアビィがギンに尋ねる。


「貴様、何故こんなに早く追い付いたのだ!それに私の部下達は⁉」

「俺には速度強化の魔法があり、奴らを振り切った。それに俺達の仲間が今頃お前の部下と戦っているだろう」


 ジエイが魔術師達を引き付けていることを暗にアビィに伝え、更にアビィに対し強く言葉を放つ。


「もうお前達に勝ち目はない、エイムは俺達の所に帰らしてもらうぞ!」

「そうはいかぬ、この娘は我らが帝国の者の血を引いておる。だから我ら帝国に忠誠を誓うのは当然ではないか」

「血……だと?それだけでエイムを縛る権利がお前達にあるというのか!」

「何を⁉」


 帝国の者の血を引くエイムが帝国に忠誠を誓うのは当然だと言わんばかりのアビィに対し、ギンは強く反論し、自らの考えをぶつける。


「確かにエイムの血の上の親は帝国の者かも知れない!だがエイムをここまで育てたのはコッポの村のご両親だ。俺は1度しか会ったことはないが、エイムとその人達は紛れもない親子だ!」

「ギンさん……」


 エイムもギンの言葉を聞き入っており、更にギンは言葉を続ける。


「それだけじゃない、エイムは自らの意思で俺達と一緒にお前達や魔族と戦うことを決めているんだ!いくらエイムが帝国の者の血を引いててもお前達にエイムをどうこうする権利などない!」

「力なきものが力ある者に従うのは当然の事、お前の言葉など我らの前では何の意味もない」

「そう言うなら俺を倒して見ろ、例え俺を倒しても他の仲間がお前を追うだろうが」

「抜かせ!」


 ギンとアビィが臨戦態勢に入るとエイムがギンに声をかける。


「ギンさん、私も戦います」

「エイム、戦えるのか?」

「はい、皆さんが頑張っているのに私だけなにもしないわけには行きません」

「……頼む」


 エイムの懇願にギンが了承するとアビィから魔法を放つ。エイムもそれに対応し、魔法を放つと互いに相殺する。


「おのれ、まだそれ程の力を残しているとは」


 アビィが狼狽しているとギンが接近し、ギンが斬りつけていく。接近戦が苦手なアビィにとっては杖で応戦するほかなく、魔法を放つ間も与えられず絶体絶命となる。その時ギンの剣がアビィを切り裂き、アビィはその場に倒れこむ。


「ば、馬鹿な、こ……の私が……こ……の、よ、う、な、場所で……」


 アビィは絶命し、その生涯を終えた。アビィも帝国軍人としてこれまで死力を尽くしたが終わりはあっけないものである。


「終わったか……」


 ギンはそう呟くとその場に座り込む。


「ギンさん、大丈夫ですか?」

「俺は大丈夫だ、エイムは?」

「私は……その、もしかしてギンさんが話そうとしてくれたのって……」

「そうだな、話さないとな」


 ギンはエイムに対し、全てを打ち明けることとした。

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