海の傭兵

 ギンは小さい船で帝国軍の目をかいくぐり、補給拠点に侵入し、施設の無力化をはかる案を提案したが、二フラに軍船では帝国軍に見つかる可能性が高く、民間船の方が良いという言葉を発し、その言葉を聞き、ムルカがボガードなる人物の存在をあかし、ギンがそのボガードについて尋ねていた。


「ムルカ殿、そのボガードという人はどういう人物なんですか?」

「うむ、私も直接は会ったことはないのだが、ボガード氏は今でこそ荷船の運搬業を営んでいるが、かつては海賊として名を馳せておったのだ」


 海賊という言葉を聞いて、エイムが少し不安を露わにする。


「か、海賊ですか?大丈夫なんですか?怖くありませんか?」

「エイム殿、海賊というのは言葉の綾でボガード氏自身は本当の海賊より宝を奪われた人の依頼で宝を取り返す仕事、いわば傭兵のようなものだな」

「そうなんですか、ちょっと安心しました」


 エイムの安堵した表情を見てヨナが声をかけた。


「っていうかエイム、あんたあんだけ帝国や魔族相手でも肝が据わっているのに海賊は怖いのかい?」

「ええ、なんかそういう感じがあるんです。ヨナさんは怖くないんですか?」

「海賊とは違うけどあたしらは山賊退治もしたことがあるからね」


 エイムとヨナがやりとりをしているとムルカが話を本題に戻す。


「話をボガード氏に戻そう、彼自身が船を所有しておりそれを借りて作戦を実行できないか、交渉してみる必要があるな」

「ではプレツ軍の方で交渉をしてみましょう。私が上に掛け合ってみます」

「いや、二フラ殿、それには及ばん。交渉は私が行こう」


 ムルカの提案に対し、二フラが疑問をぶつける。


「何故です?軍の依頼ならば簡単には断れないと思いますが」

「もうすでに帝国が迫っているのだ。少しの時間も惜しい」


 ムルカの言葉を聞き、ルルーが口を挟む。


「ムルカ様、それでしたら私も参りましょう。我々でミッツ教団を代表して交渉するという意味で」

「うむ、頼むぞ」


 ムルカとルルーのやりとりを聞いてギンが声をかける。


「ムルカ殿、ルルー、俺も行って構わないか?」

「私達は構わないけど。珍しいわね、あなたがこういうことをしたがるなんて」

「海と陸、活動の場所は違うが傭兵をしたことがある者同士で通じる部分があるかも知れないからな」


 ギンの言葉を聞き、ムルカが言葉を放つ。


「では、ギン殿、貴殿の言葉に甘え、協力をしてもらおう」

「はい」


 海と陸、それぞれの傭兵はどのような部分で通じ合うのであろうか?

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