勝利への動き

 スップより南に存在する港町ニリに住むというかつて海の傭兵として名を馳せたボガードという人物より船を借りる交渉の為、ムルカ、ルルー、そしてギンがニリに赴こうとしている中、ギンが他の者のに呼びかけていた。


「じゃあ俺達が交渉に行っている間にみんなはゆっくりと休んで帝国軍の侵攻に備えてくれ」

「それでしたらギン殿、私は帝国軍の動きを調べてみましょう。本隊はまだ到着していないでしょうが、斥候や先遣隊がすでに侵入しているかも知れないので、私はフィファーナ隊に潜入していたので敵の顔もある程度分かります」


 ギンとジエイのやり取りを聞いてヨナが声をかける。


「それならさあジエイ、あたしの傭兵団の奴もあんたとは別ルートで探らせるよ。軍の奴ってのは意外に癖が出やすいし、あたしらはそういうのを見抜くのが得意だからさ」

「任せて下せえ!姉御!帝国の奴らなんざケチョンケチョンにしてやりまさあ」

「バカ!今は手ェ出しちゃダメだよ。そういう奴を見つけたら1人は追いかけて、もう1人はあたしに知らせな」


 それぞれの役割が決まるとギン達は出発の準備を始めた。


「じゃあ、俺達は行くか」

「そうね、司祭様行って参ります」

「必ずやボガード氏との協力をとりつけて参ります」


 ギン達の出発の挨拶に司祭が反応を示す。


「では、気を付けて下さい、ムルカ、ルルー、ギン殿」

「はい!」


 ギン達がボガードの交渉の為、教会をあとにしてからギン達が遠くにいったであろうタイミングをはかり、ジエイが出発を試みる。


「では私は帝国軍の動きを調べて参ります」

「気を付けて下さい、ジエイさん」

「頼んだぜ」


 エイムとブライアンの見送りの言葉に軽く頷き、ジエイが教会をあとにする。


 ジエイが出たタイミングを見てヨナが部下に指示を出す。


「じゃあ、あんたらも頼んだよ」

「任せて下せえ!姉御!」


 ヨナの指示を受け、傭兵達も教会をあとにする。


 教会にはエイム、ブライアン、ヨナ、そして司祭や二フラがいるという状況になり、二フラがエイムに声をかける。


「あ、エイム殿少しよろしいでしょうか?」

「私にですか?何でしょうか?」

「以前、あなたとギン殿が帝国軍との戦いの中で助けたマリンという少女のことですが」

「マリンちゃんがどうしたんですか?」


 エイムの疑問に二フラが返事を返す。


「実はあの子は団員の妹で、あれからもあなたに会いたがっているという話を聞きまして、ギン殿達が戻って来るまでに会う時間はあると思いますが、お会いになりますか?」

「はい、是非お会いしたいです」

「では、その団員にここまで連れてくるよう行ってきます」


 二フラが教会を出ようとするとブライアンが声をかける。


「その女の子の兄貴ってことは、平民の兵士ですか?確か前は俺以外に平民の兵士はいなかったんじゃ」

「カールを追放し、それに倣った者達も罪状の重さはバラバラだが処分を下した後に志願者を募ったがそれはうまくいかなかったのだ」

「それじゃあ、どうして今は?」

「以前に砦をムルカ様やお前やギン殿達が守り通したことで、我こそはという平民が多く志願してくれた。元傭兵や過去に退役した者も戻ってくれたのだ」


 兵の増員がブライアンやギン達の活躍によることが大きいと強調する二フラが更にブライアンに言葉を投げかける。


「お前達が帝国に勝つことで希望を与えられた人達が多くいる。それが全てではないかと思う」

「隊長……絶対帝国に勝ちましょう!」

「もちろんだ」


 隊を離れても二フラへの敬意を忘れないブライアン、そしてブライアンの影響力の大きさを感じる二フラであった。

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