近づきし敵

 エイムから魔法の話を聞きながら歩いてからしばらくすると村の奥へ向かっているからか、夜が近くなってきたかで森の中が一気に暗くなっていくのを一同は感じていた。


「だいぶ暗くなってきたな、ジエイ、たいまつを出してくれ」


 ギンよりそう言われたジエイはたいまつを取り出し、先の方に火をつけ、持ち手をギンに手渡す。


「どうぞ」

「すまない」


 そう言ってギンはジエイよりたいまつを受け取り、左手に持って歩き出す。


 そのままギンがたいまつを持ちながら先頭を歩き、一同が後ろからついて歩き続けていると、全員が周りの気配の変化に気付いた。


「みんな、さっきと空気が変わったぞ」


 ギンの言葉に一同は頷き、エイムもある変化に気付く。


「さっきより魔力の波動をより正確に感じます。もう、魔力の源はすぐ近くです」


 エイムがそう言い放った次の瞬間、何者かがギン達に襲い掛かる。


 ジエイが短剣を放ち命中させた魔物の姿を見て一同が反応を示す。


「シルバーウルフ⁉」


 シルバーウルフとは、狼型の魔物であり、銀色の毛並みをしており、基本的には群れを成さない魔物だが、ギン達の周りには少なくとも10体は確認される。


「どういうことだ⁉こいつらは群れを成さないはずだ」

「多分、操作魔法の影響ね」

「私に任せてください」


 ジエイはそう言うと両手で印を結び火遁の術を放つ。


 ジエイが放った火は半数ほどを焼き尽くし、残った群れがギン達に襲い掛かるがそこにブライアンが飛び出す。


「うおおおお!」


 ブライアンが雄叫びと共に残りの群れを斧で切り裂き、シルバーウルフの群れを全滅させる。


「よっしゃああああ!」


 ブライアンが勝利の叫びをあげるがギンは冷静に周りを見渡す。


「まさか、これで終わりということはないよな」

「あっ!」

「どうした?エイム」

「近づいてきます……」


 エイムが示した先に最初は影しか見えないが、段々とはっきりとした姿が見えてくる、それはマントを装備した男の姿であるが、顔色がおおよそ人間のそれとは思えないさまであった。そしてその者が第一声を放つ。


「ふっふっふっ、あれだけのシルバーウルフをこうも簡単に全滅させるとはあなた方は人間にしては相当な力をお持ちのようですね」


 男が人間ではなく魔物だと認識したブライアンはある違和感を覚える。


「どういうことだ?あいつは魔物のはずなのになんであいつの言葉が分かるんだ?そういう魔法なのか?」

「いいえ、明らかにあの魔物は私達の言葉を理解して話しているわ」


 ルルーの言葉を聞いて魔物が返事を返す。


「おや、気付かれましたか、私程の魔物になると人間の言葉を理解することなど容易いことなのですよ」


 魔物の言葉を聞いたギンが質問をする。


「お前は一体何者だ?」

「おっと、申し遅れました。私はブリックと申します,以後お見知りおきを」


 ブリックと名乗る魔物の目的とは?

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