魔法講座

 魔物を操り村を襲わせたものがいる可能性がある森にギン達は入り調査を開始していた。


 ギンが先頭を歩き、近くでエイムが魔力の方向を案内し、ムルカが最後方を歩き、警戒している中ブライアンがエイムに対し抱いた疑問をぶつける。


「なあ、エイムさっきの魔法っていつもの魔法と呪文の詠唱が違うように感じたんだが、なんか違いがあるのか?」

「その前にブライアンさん、魔法の基本から話してもいいですか?」

「それって長くなるか?」

「ええ、少し」


 エイムとブライアンのやりとりを聞いてルルーが口を挟む。


「私も興味があるから話してくれる、まだ魔力の根源はそう近くないんでしょう?」

「はい、まだだいぶ先です。ギンさん、ムルカ様、周囲に魔物の気配はありますか?」


 エイムより尋ねられたギンとムルカ、そしてジエイも返答する。


「いや、今のところはいなさそうだ」

「後方も問題ない」

「私も念の為、遠くまで集中しておりますが気配はありません」


 ギン達の返答を聞いて安心したエイムは魔法の基本から今回の魔法といつも使用する魔法の違いの説明を始めた。


「じゃあ話しますね、まずは基本魔法から話しますね。これは火や水を放つ魔法です。精霊と未契約でも魔法の素養さえあれば使えます。ギンさんがよく使う火球の魔法はこれにあたりますね」

「なるほどな」


 ブライアンが頷くのを見て次の話をする。


「次に応用魔法です。これは基本魔法をさらに変えた魔法で例えば火なら火そのものを大きくするか火を出さずに熱を発するかという魔法の使い方ですね。ギンさんのフレイムボムはこれにあたりますね」

「あれはまだ使いこなすのも魔法剣に転用するのも難しいな」

「ギンさんは私より魔力コントロールが上手いから大丈夫だと思います」


 エイムはそう言うと次の話を始める。


「次に契約魔法です。私が戦いで使うことの多い魔法なんですが、これは精霊との契約が必須で精霊に力を借りるように呪文の詠唱をするのが特徴ですね」

「司りし者っていうのが精霊のことなのよね、それは私も知っているわ」

「はい、そしてその魔法は威力が高い魔法や範囲が広い魔法が多く、消費魔力も多いから使いどころは慎重にならなければなりません」


 エイムが契約魔法の使いどころの難しさを話すと今回の魔法の話に及んだ。


「先程、ブライアンさんが気にされていた今回の探知魔法ですがあれは献上魔法ですね」

「献上魔法?」

「私の魔力を精霊の成長前の存在、いわゆる妖精という存在に魔力を献上して使う魔法です。天と地の精霊はどんな魔術師も契約することはできません。だからその妖精にあたる存在に魔力を与えて今回のような魔法を使用するんです」

「契約うんぬんの文言がなかったのはそういうことか」


 ブライアンがエイムの説明に納得すると、ヨナがエイムに対し意外な反応を見せる。


「ねえねえ、エイム、あんたもしかして妖精とお話しできたりする?」

「いいえ、というより精霊も妖精も概念的な存在なので話すと言うよりこちらから呼びかけると言った方が正しいですね」

「なーんだ、つまんないの、本に出てくる妖精と話すことができりゃあ夢があると思ったのに」


 ヨナの話を聞いてルルーが反応を示す。


「フフフ、ヨナも意外とかわいい所があるのね」

「なんだよルルー、あたしをからかってんのかい!」

「そうじゃないわ、あなたいつも傭兵団を鼓舞するようなことが多いし、女の子らしいところがあって安心してるの」

「あいつらの前じゃ、妖精と話したいだのなんて言ってたら、威厳がなくなると思うからさ」


 ヨナとルルーのやりとりを聞いてギンの中に疑問が生まれヨナにぶつける。


「ヨナ、お前が本を読めるほどの余裕のある生活をしていたようには思えないが、そういった本の内容をどこで知るんだ?」

「あ、ああ、それ、ほら前にも話したけどあたしらは行商もやってるって言ったろ、たまに市にすごい安く流れてくるからそれを買い取って本を読みそうな感じの客に売るんだよ。中身の確認は当然のことじゃん」

「そうだな……」


 ヨナの発言に若干の違和感を覚えるがあえて深くは聞かずに話を流すギンであった。

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