恐怖という名のエサ

 ブリックと名乗る人間の言葉を理解し話すことのできる魔物と相対したギンはそのブリックに目的を尋ねていた。


「今、お前はブリックと言ったな」

「ええ、私の名はブリックといいます」

「ブリック!お前の目的は何だ?何故、あの村を襲った⁉」


 ギンより質問をされるが少し意外だったのか思わずブリックは大笑いをしてしまう。


「フッフッフッ、ハーーーハッハッハ!」

「何がおかしい!」

「いや、失礼、あまりにおかしい質問をされたのでつい……」

「おかしい……だと」


 まるで人を小馬鹿にしたような態度のブリックにギンは不快感をあらわにするが、ブリックは気にもとめず、自らの目的をギン達に話す。


「我ら魔族にとっては人間などエサに過ぎないのですよ」


 エサという言葉にエイムが驚嘆して言葉をもらす。


「わ、私達がエサ……」

「まあ、肉を喰らって喜ぶのはさっきのシルバーウルフのような野生の魔物で、我らは恐怖という感情を喰らうことに喜びを感じるのですよ」

「恐怖という感情を食べる?それは一体どういうことですか?」

「人間に恐怖を与えるだけでそれが我々の糧になるのですよ」


 ブリックの説明を聞いたギンが怒りと共に疑問をぶつける。


「その為に、お前は野生の魔物にあの村を襲わせたというのか⁉」

「勘違いされてもらっては困ります。なにも私が自らの身の欲望を満たさんが為にのみ襲わせたわけではありません」

「何⁉」

「あの魔物達もエサがなく困っていたので、彼らには肉を、私は恐怖という感情を互いに食すことができるようにしたわけですよ」


 ブリックの説明を聞いたギンは飽きれながらも言葉を放つ。


「どうやら、お前とは話しても無駄のようだな」

「我ら魔族とあなた方人間では価値観が違いすぎます、話してどうこうしようというのが愚かです」


 そう言ってギン、そしてブリックが臨戦態勢に入り、ギンが一同に呼びかける。


「みんな、とりあえず俺がこいつの相手をする。みんなは周りを警戒してくれまだなにかあるかも知れない」


 ギンの言葉を聞いてジエイが声をかける。


「ギン殿、知性があるうえにどのような能力を持っているか不明ですので気を付けて下され」


 ジエイの声に頷きギンは間髪をおかず剣でブリックに切りかかるが素早い動きでかわす。


 それを見たギンは左手より火球を放つが魔力障壁で防がれてしまう。


「魔力障壁か……」

「この程度の魔法で私を倒そうなどとは随分と無謀ですね、ではこちらからも行きましょう」


 ブリックがそう言うと両手の爪が延びていき、刃状に鋭くなっていく。


 そしてギンへと向かっていく。

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