ニートの義妹が俺の膝の上からどこうとしない
でずな
お兄ぃはみーちゃんのイス
父は大企業の社長!
母も、またまた海外企業の社長!
俺はそんな恵まれた環境で育てられた。
欲しい物があればなんでも手に取ることができ、嫌いなキャラクターがテレビに映っていれば、消すこともできる。
小学、中学、高校、すべて学年一位の秀才である俺こと
人差し指を高速に動かし、眼球も高速に動かす。
その目の先にあるのはブルーライトを放った、ディスプレイ!!
ディスプレイの右上には、『求人募集サイト』と書かれた文字が。
「仕事が……ない!?」
早いところ仕事を探しているのだ!!
こ、この俺がニートになるなんてありえない!
これはなにかの間違いなんだ。
俺に合う仕事が一つもないなんて……おかしい!
「くっそぉ〜……こんなことなら高校卒業後、気まぐれで一年間魚釣りをするんじゃなくて、会社継いどけばよかったぁああああ!!」
「ちょっとお兄ぃ、動かないでよ。手元ブレちゃうじゃん」
不満を呈したのは、俺の膝の上でソシャゲを嗜んでいる義妹、
ちなみにこいつはついこの間高校を卒業し、仕事をせず穀潰しのニートだ。
「いい加減、どいてくれないかみーちゃんよ。俺はニートのみーちゃんと違って、ちゃんとした仕事に就いてがっぽり儲けようとしてるんだが……」
「お兄ぃ。その求人サイト、安い日雇いバイトしかないけどどうやってがっぽり儲けるの?」
「な、な、な、なんだってぇ!?」
本当だ……。
ていうか、日雇いってなんだ?
「わかりやすく書いてある文字も読めないお兄ぃが、がっぽり儲ける仕事なんて無理無理。地球がひっくり返っても、月が降ってきても無理無理」
「そ、そんなこと言わなくなっていいだろ……。じゃあ、俺は一体なんの仕事をすればいいんだよ! この、簡単そうな日雇い? とか言うのもできないんじゃ、何もできないじゃないか!」
いじけていると、頭をぽんぽん、と撫でられた。
「慰めても、言ったことは消えないよみーちゃん。心の棘は取れないよ!」
「いや私、慰めてたつもりじゃないんだけど」
「な、な、な、なんだってぇ!?」
そこは嘘でも慰めてたつもりって言ってくれよ……。
余計、心に棘が刺さっちゃう!
「な、慰めてたんじゃなくて……頭を触ってたの」
「もしかして匂いが気になったのか……? 実は俺、昨日みーちゃんにおすすめしてもらったゲームに夢中になって、お風呂入ってないんだよね」
「そ、そうなの。よかった……」
よかった?
今みーちゃん、ゲームに夢中になってお風呂に入らなかった俺のこと、喜んでなかったか?
流石に聞き間違えだよな。
「臭かったら、臭いって言ってくれよ。いや、そっちのほうが傷つくな。……ん? でも臭かったら、俺の膝の上に乗ろうとしないか。じゃあ、なんで俺の頭を触ったんだ?」
「そ、そんなのなんだっていいでしょ!」
みーちゃんはぽこぽこ、と俺の体を殴ってきた!
全然痛くない……。
けど、怒らせてしまったのは事実。
「ごめん。ごめんって。もう、なんでみーちゃんが膝の上から頑なに動かないのか聞かないから殴らないでくれ……。俺、みーちゃんに殴られてるって思うと悲しいよ」
「ごめんなさい……」
しょんぼりしてしまった。
「あの……なんだ? 殴るのはだめだけど、頭を触る? 位なら減ることもないし、してもいいぞ」
「やった! お兄ぃ大好き!」
みーちゃんはさっきと裏腹に、猫のように頭を俺の体に擦りつけてきた。
う〜む。女の子はよくわからないな。
ま、いっか。本人が嬉しそうだし。
「と、そんなことよりバイトだバイト。お金を自分で稼いでこその一人前の男。なんか高い金貰えるバイトないかなぁ〜」
「いいの。お兄ぃは私のなの。ずっと、私の近くにいればいいの。お兄ぃだいしゅき〜……」
あれ?
今のはそ、空耳だよな?
「み、みーちゃん?」
「すぴーすぴー」
寝ちゃってるよ。やっぱ空耳だったのかな。
……さて、どうしようか。
これからまたバイトを探す?
う〜む。まぁとりあえず、みーちゃんを起こさないように釣り動画でも見るか。
ニートの義妹が俺の膝の上からどこうとしない でずな @Dezuna
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます