しがみつき続けた20代。28歳で再デビュー決定

実家に戻り、先祖代々の家業である農家として野菜を作りながら、派遣社員としても働き、夜は小説を書く生活が始まりました。


ただ、他人の作品はあまり読みませんでした。

それまで好きだったアニメや漫画も観たり読んだりする量が減り、特にラノベ原作系は忌避していた傾向があります。

自分の努力不足を棚に上げ、中身を深く読んだ作品でもないのに「なんでこんなのが人気なんだよ」「コレがアニメ化されるって、読者や視聴者のセンスがないんじゃないの?」と、非常にドロドロした薄暗いものを抱えていました。


ですがアニメ化された『オーバーロード』や『リゼロ』を何かのきっかけで観て、あんなに目を背けていたのに「おもしれ……おもしれ……」と素直に楽しむことができました。


あぁ、自分が好きな作品って、こういう感じだったよな。

自分もこんな物語を書いてみたいなぁ。

それで自分もこんな風に、たくさんの人を楽しませたい。「アンタの書く作品、面白いよ。好きだよ」って評価されてみたい。


既に好評な作品や作家には、ちゃんと評価されている理由がある。

自分のセンスと合わなくても、売れている作品はちゃんと考えられて『商品』になっている。

そんな当たり前のことを、20代前半になって、ようやく気付かされました。


それから自分は再び――劣等感や嫉妬を抱えたままでも――正面から執筆に取り組もうと決めました。


作品を書き上げた経験が少ないなら、約10万文字を1作として、とにかく完結させよう。

ラノベだけでなく、一般文芸も漫画や映画も、たくさん吸収しよう。

知識がないなら、色んな作品に触れて蓄えれば良い。その一環として始めたのが、カクヨムで開催した『感想書くマン』の企画でもあります。


持っていなかった武器を少しずつ手に入れ、再び戦う準備はできていきました。


打ち切りになったとはいえ、分類としては一応『書籍化経験済みのプロ』ではあります。

新しいラノベの出版はできませんでしたが、シナリオやライターの仕事を少しばかり依頼されました。

小遣い稼ぎ程度ではありますが、打ち切り後も『文章を書く』という作業自体は、細々と継続していたのです。


そうした生活を続けつつ、Webにも小説を掲載しました。

ただ正直どれもそんなにウケなかったです。

それでも続けました。


シナリオライターの仕事が忙しくなって、一時期(ここ数年)はなろうやカクヨムから離れました。

ですがそれでも、何かしらの文章やストーリーは書き続けていました。


そしてまた、小説を出したくなった。

紙の本で、『及川シノン』の名前で、世に作品を残したい。

――思い立ったら行動あるのみ。

電撃もファミ通もスニーカーもファンタジアもHJもガガガも講談社ラノベも、とにかく新人賞を見つけては応募しまくりました。


とはいえ、一度出版していると『応募資格』に引っ掛かってしまうことがあるんですよね。打ち切り作家さんは、そこが注意ポイントです。

『プロ・アマ不問』は問題ないです。ですが『作家として出版経験のない者に限る』だと、デビュー済みの人間はそこの新人賞には応募できません。


それでも私はプロアマ不問の新人賞を探し、投稿し続けました。

ノリや勢い、センスだけで書くのはもうやめよう。

基本的な小説やラノベの書き方を学び直し、三幕八場構成を勉強し、名作映画のプロットを参考にし、書いて、読んで、書き直して、読んで、また書いてまた応募しました。


気付けば20代も中盤を過ぎ、アラサーと呼ばれる年齢になっていました。


不思議な話ですよね。

10代でデビューしたのに、1巻で打ち切りになってから、そこからようやく『プロを目指す人間らしい活動』を始めたのですから。順番が逆です。


打ち切り作家がみっともなく、性懲りもなく、無様に這いつくばって、何度も何度も応募し、落選しては書き直し、新しい作品を書き、落選し、書き直し、「独創性がない」「キャラが薄い」といった評価シートを受け取り、書き上げて、評価シートも貰えないまま一次審査で落選し、また書き始めて、投稿し続けました。

(※この時期については、後程掲載します。)


そして――28歳を迎えたこの春。

27歳の夏に応募した作品が、念願叶って新人賞を受賞しました。




……というのが、小説を書く原点から始まり、再デビューが決定した今日までのあらましです。

他人の人生に興味がない方にとっては、退屈だったかと思います。


次回からは、より具体的な内容に移っていきます。

執筆を続けるための環境づくりや、落ちた作品を他の新人賞に送ることの是非などを、実体験を交えつつ考察していきたいと思います。

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