19歳で受賞。20歳で出版。そして打ち切り
書籍化が決定し、入学した仙台の大学を、半年ほど休学することに決めました。
原稿の修正作業や、自分に足りない知識を吸収するため、そのための執筆期間として費やすつもりで休んだのです。
ただ今思えば、あまり良い選択ではなかったです。
まだ出版されてもいないのに、もう既にベストセラー作家になったつもりで、大学での勉強や友人関係を
大学の関係者やゼミの皆さんには、今でも申し訳ない気持ちがあります。
そして年が明け、20歳になる2014年の1月。人生初の商業本を出版しました。
ですが一か月も経たないうちに「売上が不振なので、申し訳ありませんが2巻は出せません」と担当編集者から伝えられました。
一人暮らしをしている部屋で、泣きながらトイレで嘔吐したのは、後にも先にもあの夜だけでしょう。
発行部数は約1万部。
そのうちの70~80%くらい売れればシリーズ継続したらしいですが、50%ほどしか購入されなかったとのこと。
しかし売れた部数に関係なく、印税の金額というのは、発行した部数で決まります。
ですので半分しか売れていないのに、1万部に相当する比率の印税を貰いました。
それもまた、非常に心苦しかったです。
面白いと思って賞を与えてくれたのに、初めての修正作業に戸惑っていても優しくアドバイスしてくれたのに、編集部や担当編集者の期待に応えられなかった。
数多いる新人作家のうちの一人だとしても、損をするために受賞させたり出版する会社は存在しないでしょう。売れないと思った作品は書籍化させないはずです。
なのに、売れなかった。しかも自分は、売上とは関係なくキッチリ印税を貰う。
なにか――『人としていけないこと』をしている気分でした。
その印税は、復帰した大学の学費として使いました。
出版された作品のレビューや感想もさんざんなものでした。
今にして思うと、高校生が無料のWebサイトで、ノリと勢いだけで書いた作品なので当然でしょう。
ギャグやコメディであるのを免罪符にして、とりあえず自分の好きな作品や知っている知識、単語や展開を書き連ねただけで、パロディとも言えない内容だからです。
ですが自分にとっては、高校~大学の期間の、『青春』を象徴する作品だったのです。
その物語やギャグを「面白い」とコメントしてくれた、投稿サイトで知り合ったファンや友人達。彼ら彼女らとの繋がりを証明する、絆の作品でした。
ただ商業の分野では、そんな思い入れや少数のファンなど、一切関係ありません。面白いか面白くないか、売れるか売れないかが全てです。
打ち切りにはなったものの、編集さんは「新しい企画を考えましょう」と、ポジティブにメールを送ってくれました。
新しいストーリーを考え、企画書を作成し、何度も何度も、提案や修正を繰り返す。
しかし――編集部からのゴーサインが出ることは、ついにありませんでした。
もともと私は、デビュー作以外はマトモに『一作のラノベ』を書き上げたことのない人間です。
小学時代の空想話、中学時代の短編小説、高校時代の二次創作SS……どれも子供の遊びの領域を出ません。
絶対的に、知識と経験、そして実力が足りていませんでした。
しかも思い入れのある作品が打ち切りとなって、メンタルはガタガタで、休学開けの大学の授業すらマトモに受けられませんでした。単に甘えていただけですね。
やがて編集さんからのメールの返信は遅くなり、その方は他の会社に転職し、後任として引き継いだ女性編集者からは「担当変わりました」の挨拶メール以降、二度とやり取りすることはなかったです。
思うに、事実は事実として受け入れ、さっさと新企画に熱を入れて取り組むべきだったのでしょう。
作家業のみで食っていくのは難しいと最初から分かっていたのだから、気持ちを切り替えて、大学の講義に集中するべきでした。
ですが私は結局、勉強も執筆も就職活動もどっちつかずで、全てにおいて中途半端な状態で地元に戻ることになりました。
人生において大きな挫折を味わいました。
高校受験も大学受験も特に苦労せず合格してきた人間にとって、初のWeb連載作品がそのまま書籍化した人間が思い知る、初めての『不合格』でした。
しかし――それでも尚、筆を折ることはしませんでした。
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