お茶

雨空りゅう

第1話

 風鈴の涼し気な音が耳を通り抜ける。うだるような暑さがほんの少しだけ和らいだ気がする。いや、そんなことは無い。汗を吸った重いシャツで額に浮かんだ玉の汗を拭う。


 体の外側はこんなにも濡れているのに、内側は砂漠のようにカラカラだ。


 寝転んだ姿勢から起き上がって台所に足を運ぶ。足の裏にも汗をかいているようでぺたぺたと音が鳴った。まるで幼子が履く音が出る靴だなと笑ってしまう。


 冷蔵庫の扉を開ける。溜まっていた冷気が体の熱気を舐めとっていく。思わず息が漏れた。少しの間だけでもこのまま冷蔵庫浴を楽しみたかったが、電気代の支払いで別の汗をかきたくはない。


 目的の物を取り出して冷蔵庫の扉を閉める。それは中身がたっぷりと入った中型のペットボトル。


 冷蔵庫で十分に冷やされているのを首筋に当てた。首から全体に、血液が巡るようにじんわりと冷気が広がる。


 自分の体が思っていた以上に熱を持っていることを自覚する。我慢はできそうになかった。


 両手でもって捻る。パキりと音が鳴る。クルクルと蓋を回す。手のひらに伝わる冷たさに期待で胸がふくらむ。ペットボトルを口元に持っていき体の中へと流し込む。


 ああ、冷たくて気持ち良い! 生き返るようだ!

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お茶 雨空りゅう @amazora_ryu

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