第2話 彼女はどこかおかしい

 トイレから戻ってきた亜夢からはさっきまでの元気さはなくなり疲れ切っている様子になっている。

「お前大丈夫か?」

 魁人も心配になっている。いつもは疲れたとしてもあまり表情に出さないことが多くわかりづらいからだ。ここまで大きくぐったりしているのは見たことがない。

「え、うん気にしないで」

「食べないのか」

「う、うん。あのよかったら一緒に食べない?その、食べきれないから」

「わ、わかった」

 あったことのない他人と話しているかのように距離を感じている。疲れというよりは緊張などからきている感覚だ。

 魁人は心配しながらもパフェを食べ進める。ペースは完全に魁人がはやく。亜夢はほとんど手を付けようとしない。気になってしまうことが多いが雰囲気的にも深く追及できずにいる。

 変な空気の中なんとかパフェを食べきれた。結局亜夢のほうはほとんど口にせず魁人が大半を食べた。

「悩み事あるのか?」

「ない、かな」

「ならなんでそんなくらいんだ?」

「大丈夫だよ」

 笑顔を見せるもそれはいつもとは違う無理をしている顔。

「ま、いいや。気分のらないようだしかえっか」

「まだ!!ダメ」

 魁人が立ち上がろうとすると亜夢が腕を強くつかみ大きな声で叫んだ。

「どうした」

「いや、そのまだ座っててほしい」

「べついいけど」

「ありがとう」

 亜夢はほっとしている。それがなぜなのかわからない魁人からしたら不思議でしょうがない。

「今の私ってどう思う?」

「そうだな。元気はないだろ。お前は何か隠してるようだし話したくないから詳しくは聞かないけど」

 この一瞬で変化することがおかしく感じる疑問と自分の前では無理をしていたかもしれないと思っている。深くは聞かないのも普段から何かあったからと仮定しているからだ。

「そのパターンか」

「パターン?」

「ううんなんでもない。そっかー私ってそう思われてたんだ。脅かしてごめんね」

 一瞬で元の状態に戻った。

「脅かすなって」

「ごめん。あ、パフェは魁人のおごりで」

「こいつ」

 まだ疑念は残ってしまうが演技だったということで解決したのであった。

 亜夢の変貌が解決し二人は変えることになった。その歩道の途中で車の衝突事故の光景が見えた。

「事故かよあぶないもんだな」

「そうだね」

 心の中でどこかうれしく感じる亜夢。

「入学式まであと少しだね」

「そうだな」

「緊張してる?」

「別に大して変わらんだろ」

 二人の通う学校は中学校も近い。そのため同じ中学の生徒が多めに入学している。環境は変わっても人は大きな変化はそこまでない。

「それでも私は心配」

「対策は大事だろうな」

「え、」

「俺らが幼馴染であり恋人になる気はない。どうせ二人でいれば勘違いされるだろうし」

 二人の仲は幼馴染を超え恋人といってもいいほど。しかし二人とも恋人にする人は別がいいと思っている。

「付き合ってないんだ」

 亜夢はもう付き合っている状態なのだと思っている。

「どした?お前が偽装も嫌って言っただろ」

「ご、ごめんだよね。自然だったから」

 一度は偽装でも現状は付き合っていることにして互いに心情の変化があれば分かれたようにするのもありかと思われた。しかし亜夢は本物の恋以外で付き合いたくないいこの提案は却下された。

「ってかさっきもはなしただろ。どした」

「あ、そ、そうだよねごめん」

 頭をおさえる亜夢。どこか調子が悪そうだ。

「今日は休めよ」

「うんありがとう」

 ただ、調子が悪い。それだけならいいが、それとは違う何かだとしたらいったいなんなのだろうか。

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