満開の恋
蓮蠱
第1話 彼女のようでただの友
「お兄ちゃんがもう高校生か。大丈夫?」
ソファーでスマホをいじっている妹の瑠奈に心配される千波魁人(せんばかいと)この二人では妹のほうが優秀なのである。瑠奈は家事完璧で頭がよくスポーツ万能。おまけにクラスでも人気者という超高スペックガールである。それとは逆に魁人は友達はいるものの学力は常に下位。スポーツも走ることが以外は好きでなく家事なんてやるわけない。両親共働きで日中いない分春休みのような長期休みになると基本的には瑠奈が全部をやってくれている。別にそれに対して魁人は嫉妬なんてしてないしむしろ自慢の妹と誇っている。
「何とかなるろ。中学でも成績悪くてもいけたし」
「いやそれ、赤点がないからでしょ。ほんとあーちゃんに迷惑かけないでよ」
あきれた様子の瑠奈。魁人のこの余裕な感じには感心しているが、ほんとにやばくなったら幼馴染で隣に住んでいる遠野亜夢(とおのあむ)に助けを求めるという一連の流れがある。
「うんじゃま。遊んでくるか」
話をそらす魁人。高校になっても亜夢に頼ることは必然なのである。
「また亜夢ちゃんと?」
「あれだからな。俺が出なくてあっちが誘ってるんだからな」
基本的には亜夢から誘いが来る。もちろん魁人にではなく瑠奈も含めてだ。今日はもともと予定があると聞いていたから誘っていないだけで三人ででかけることも多い。
「よくそれで付き合ってないって言えるね」
亜夢と魁人はよく遊びに行っている。互いにいつもの友達と遊ばないときはだいたい一緒にいることが多いくらいに。だからか、周りからは付き合っていると思われているが決してそうではない。特に二人とも恋愛感情では考えてなく普通の仲のいい友達って感覚でいるだけだ。
「あいつと付き合うのはないってさすがに。知りすぎてるし。もう少し夢が見たい」
魁人にとって恋愛とは彼女を知るという楽しみがあると思っている。だが、亜夢とはずっと一緒にいるから付き合ったところで変わりがない。それだと意味がないと思っている。
「それが彼女いない歴=年齢の人のセリフと考えると悲しくなるよ」
「ほんとそれな。俺なら何人かから声かけられてもいいんだろ」
彼が彼女ができないのはどちらかというと亜夢との彼女疑惑が原因なのだが、それに魁人は気づいていないのである。
「まー私も言えたもんじゃないけど」
「何言ってんだ。お前は告られてもふってるだけだろ。目撃情報いろいろあるんだからな」
「いい人いたらいいんだけどね」
瑠奈はそもそも男に全く興味がないのである。友達までは構わないが異性と付き合うというのが理解出ないでいる。
「俺への嫌味にしか聞こえねーぞ。っまいいか。そろそろ行くわ」
「いってらっしゃい」
扉を開くとキャスケットを被る長髪の少女が立っていた。
「遅いよー」
「一分遅刻は誤差だっつーの。ほら行くぞ」
彼女が遠野亜夢である。亜夢を知っている人は活発で元気な人だとわかるが、初見で見るとまじめでしっとりけいの上品なイメージを持たれることが多い。
「もう再来週には高校生か」
「未だに疑問なんだけど。お前なんで俺と同じ高校選んだんだ。進学校とか行けたろ」
亜夢もまた頭がいい。知識0の人間に知識を短期間で与えることができるくらいに。頭のいい進学校も合格できるといわれていた彼女であったが魁人と同じ普通の学校を選んだのである。
「私勉強嫌いだし。そもそも夢をかなえるためって考えたら近くの高校に行ったほうがいいでしょ」
彼女には誰にも教えていない夢がある。魁人には夢があるとは言っているけどどんな夢かは叶うまで内緒と言われている。いろいろと探ってみこともあったが、絶対に表には出さないくらい厳重に隠しているのである。
二人はいつも近場のショッピングモールに行っている。今日もモールで買い物している。
「これ似合う?」
今日は亜夢の服選びに付き合っている。
「そっちのほうがいいろ」
「こっちって普通過ぎない?」
「お前はそっちのほうがちょうどいい」
魁人は亜夢の性格をだいたい理解している。少し派手な服よりも普通の服を選んだのにもしっかりとした理由がある。
「じゃーこっちきるからあってたら誤ってよ」
「安心しろそれはない」
試着室に入り着替え始めた。
「おいまだかよ」
「ちょっちょとまって」
一向に出てこない亜夢に文句なぎかけてみた。すると焦っているようでどこか照れてる声が聞こえた。
「お、おまたせ」
カーテンを開けると全く着替えていない状態の亜夢が現れた。
「お前着替えは?」
「恥ずかしくて無理でした」
真っ赤にした顔を手で隠した。
「だろうな」
亜夢はかわいい服が好きだが、見ているまでなのである。いざ着替えて鏡を見ると恥ずかしくなってきてしまう。今回亜夢が選んだ服がそれに値すると魁人は察したのである。
「で、俺が選んだのは?」
「家に同じのありそうだしやめる」
魁人もまた選ぶものは基本的に同じなのであるためこのくだりがあったときの服はほぼかぶっているつまり、同じ服が増えてってしまう。
買い物を済ませ、カフェで一休憩することにした。
「今日はこのパフェにしよ。魁はどっちにする?」
魁とは魁人のことである。亜夢はずっとそう呼んでいる。魁人はそのまま亜夢と呼んでいる。
亜夢が頼んだものはキングパフェ。上から三番目(二番はジャイアント一番はパーフェクト)の大きさのやつである。
「いらんどうせあまるし」
「今日こそは行ける。私甘いもは無限だから」
これは毎月のパフェデイというものである。毎月亜夢と二人で出かけたときに一回はでかいパフェを食べている。この大食いはほかの人には知られていないプチ特技である。
「とかいって三分の一くらい残すだろ。半分切ったら全部食えよ。
三分の一と聞いてあまり食べないと思うのは勘違いだ。三分の一といってもパフェ二つ分はある。普通の女子が食べれる量以上のものを亜夢は食べている。
「瑠奈ちゃん元気?」
「いろいろ忙しそうだが元気である。というより、あいつが落ち込んでいたらお前と遊んだりしない」
「このシスコン」
「だから俺はシスコンではない。あいつがいないと親頼るしかなくなるだろ」
魁人はシスコンなのではなくただのくずなのである。
「瑠奈ちゃんとも今度出かけようかな。あんた抜きで」
「そうしてくれ」
「あ、何その態度」
「いや、お前と遊ぶのはいいんだけどよ高校でもあの噂たったら」
二人はよく遊んでいるということから付き合ってる疑惑が流れ出した。その疑惑も後半からは否定してくれる側のほうが多くなったおかげですべてが解決となった。高校になってからはなるべく疑惑の出ないようにもともといい感じの距離を置くことにしている。
「でもあんた陸上部でしょ?」
「それしかねーだろ」
「ならどっちにしろ帰りも一緒は無理だし大丈夫でしょ」
亜夢は高校では帰宅部になった(そんな部活はない)。夢のために家で作業をするらしい。
「あとは休みの日はでかけないでどっちかの家にいればいいだけだ」
隣の家ならばれることはなくなる。見られても中学の同級生からの「またかー」って視線を浴びるだけで安全だ。
「そういえば陸上部って言ったら噂なってるよね」
「何がだ?」
「陸の嬢王が同じ学校だって」
陸の嬢王。中学生の高跳び選手で彼女を超えれるものはいない。と言われるくらい好成績を収め有名となった人である。彼女はいろんな強豪校をけって二人と同じ学校に入学するとうわさが立っている。
「女子は知らん」
「あ、そうだった」
陸上の時に女子を見ると集中力がそがれるため女子のことを気にしないようにしていた(時々見ては記録を落とし、顧問に怒られていた)
「そいつがこんな弱小高に来るわけねーし同姓同名で似てる人がいたとかだろ」
「それならいいけど。彼女足も速くて地方止まりくらいなら男子にも勝てるらしいよ」
実際の記録は残っていないが、彼女の足の速さを認めるもの多い。
「それも噂だろ。もしいたら俺が勝つ。そしたら県止まりに敗北だ」
魁人は県大会以降の大会を知らないのである。
「それかっこよくないけど魁人らしいね」
あきれたような感心したような、少し複雑な気持ちになる。
「あ、私少しお手洗いいってくるからパフェ食べないでね」
「俺はデブじゃねーから」
「は!私太ってないから」
亜夢は甘党で甘いものなら人の数倍は食べる人間。しかしスタイルは普通によくむしろ小食と思われるくらい太っていない。
「さっさといってこい」
亜夢が来る前にパフェが出てきた。サイズは多い+さらになぜか増量デイでまさかのホイップの量が多くなっている。
「これやばいろ」
少し時間がたったが一向に帰ってこない亜夢が少し心配になってきた。そもそも戻ってこないとこのパフェの食べるのが無理に近い。
「ご、ごめん」
しっかり戻ってきて安心した。だが、帰ってきた亜夢は力が抜けすこしおどおどしていたような気がする。
「なにかあった」
「う、ううん大丈夫。それより待っててくれたの?」
「いや、お前が食べるなって」
「あ、そうだったごめん」
この一瞬で急変しているおかしいの一言では済まされるようなものでない。完全に別人になっているような。
「お前何かあったか?」
「ほんとに大丈夫ほら食べよ二人で。多分食べきれないから」
「お、おう」
何かおかしな気もするが冷静になれただけというなら納得はできる。今はそう思っておこう
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