【ショート】女子大生という名の最強人種 その①

 大学から帰宅し、一度荷物を置いて、最寄駅前にあるコンビニへ。


 「……あっ」


 コンビニの自動ドアの前に人影が……と思うと、よく見知った先輩だった。


 「おう、お疲れ」

 「どもっす。なんすか?今日、休みっすか?」

 「おう」

 「なんか、久しぶりっすねぇ」

 「ああ。やっぱ仕事始めると、なかなかな」


 同じ大学の先輩で、今年の4月に卒業したばかり。運送会社の社員として働いていた。


 なんといっても特徴的なのが、大学時代からしているブルーライト遮断の色付きの眼鏡。


 その上で、剃り込みの入った刈り上げ黒髪。


 大学生の頃から、ガラの悪い輩といった感じで、みんなからも『ヤーサン』と呼ばれていた。


 その上で、現在は、上下黒の作業服に身を包んでいる。


 輩に磨きがかかっている。


 「仕事どうすか?」

 「今んとこは、まあ、それなりにって感じだな。ぶっちゃけネットフリックスでアニメとかドラマばっか見てる」

 「えっ!」

 「運送業っつっても、企業間のヤツだからな。待ち時間あるとそんな感じだぜ」

 「へぇ~」

 「まっ、とはいえ、給料はなぁ……」


 ――カチッ、カチッ。


 先輩の手の中で、ライターの音。


 「……フゥ~」


 ……あっ、また吸い始めちゃった。


 大学時代から、先輩はヘビースモーカーだった。


 ここはコンビニの前。当然、喫煙は禁止となっている。


 ただ、正直なところ、この地域では路上喫煙はよくある光景だった。


 歩きタバコはもちろんのこと、公園のベンチでも、今のようにコンビニの前でたむろしながら喫煙するという光景は、どこでも見られた。


 若者というよりも、中年の男の人が、ずっと吸っていた習慣が抜けていない感じだ。


 ここは、そういった地域なのだ。


 「つ~かさ、最近、ここの地域女子増えた?」


 タバコで一服しながら、先輩が聞いてきた。


 「さっきも駅から降りてきた人見てたら、すっげぇ女子率だったぜ?」

 「あぁ、たぶん、アレっすね。女子大があっちに建ったからっすね」

 「えっ、そうなの?」

 「知らないっすか?ここの駅から2つ先の……」


 2つ隣の駅に、今年からアパレル関係の女子大が開校していた。


 路線拡張による交通の便がよくなったことで、もともと新規の移住者が増えてはいたが、女子大が建ったことにより、女子大生の人口が明らかに増えたのだった。


 「マジか~、やっぱ女子大とか建つと変わるもんだな~」

 「そうっすね~」

 「ちょっと、声、かけるか」

 「いやいやなに言って……」


 そんな話をしているときだった。


 ――キラッ……。


 なにかが光ったような気がして、駅のほうを見た。


 駅から多くの人が階段を降りてきている……そんな中から、明らかに、ひとり、こちらに向かって歩いてくる女性がいた。


 「タバコ、やめてもらえませんか?」


 近づいてくると女性は開口一番、先輩に向かって言い放った。

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じっくり短編ショートショート じっくり @jikkuri

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