21話 閃拳。
21話 閃拳。
『必死に磨き上げてきた力』が『強大な敵に通用する』という喜び。
そんな『他では代用がきかない愉悦』に溺れるセン。
この喜びは、食事・睡眠・セックスを置き去りにしている。
人が得られる愉楽(ゆらく)の最上位。
「強ぇな、ニー! こんな状況だが、正直、すげぇ嬉しいぞ! 必死に力を磨いてきたが、ぶっちゃけ、使い道はないだろうと思っていたからなぁあ!」
ナイトメアソウルゲートで1億年を過ごしている時、
センは、『こんなに強くなってどうするんだ?』という疑問に囚われた時期がある。
存在値1万を超えたころの事。
その段階で、すでに、ぶっちぎりの人類史上最強だった。
ナイトメアソウルゲート内にある『英知を集めた図書館』で、
この世のコトワリを勉強したセンは、
『世界の力のバランス』を、そこそこ正確に理解していた。
あの図書館に、『一兆の敵に関する情報』や『ニーに関する情報』が掲載されている書物もあればよかったのに――などと、心の中で、軽く文句をたれつつ、センは、
「俺の全部ぅううう! しっかり、受け止めてくれやぁああああ!」
オーラと魔力を充満させる。
その全てを右手に集中。
『カースソルジャー』と『毘沙門天の剣翼』で、
ニーの動きに制限を強制させつつ、
完璧な距離をはかって、
「――閃拳――」
エグゾギアを纏った状態で、
1億年間、必死に磨き上げてきたグリムアーツを放つ。
ただの正拳突き。
しかし、1億年かけて磨き続けた結果、
とてつもない破壊力を持つようになった必殺技(グリムアーツ)。
「ぐっぺええええええっっ!!」
センの『エグゾギア閃拳』をもろにくらったニーは、
豪快に吹っ飛んで、 壁に激突した。
「……きゅぅう……」
動かなくなったニーを見て、
センは、
「は、はは……勝ったぁ……勝った……けど……」
そこで、エグゾギアは解除される。
魔力も限界がきたため、
カースソルジャーは還り、毘沙門天の剣翼も力を失う。
搾りカスになったセンは、
(……『1兆の敵』と戦う時のためのとっておきを……全部、つかっちまった……)
先ほど使った『とっておきの切り札』たちは、
ニーとの闘いで存在感を示したとおり、
どれも、素晴らしい性能を誇っているが、
使用するためには、当然、大きなエネルギーを必要とする。
(……1兆の敵が襲来するのは明後日……明後日だと、『エグゾギアを再起動するためのエネルギーチャージ』も、『毘沙門天を最使用するための体力回復』も間にあわねぇ……カースソルジャーにいたっては、『消費系の神器』で召喚したから、もはや、二度と呼び出せねぇし……)
高性能のアイテムは、スペックを重視しすぎたあまり、
『使い勝手』という点ではお粗末なピーキー兵器ばかり。
(もっと、ちゃんと考えてアイテムを創ればよかった……正直、『ここまで強くなったんだから生身で充分だろ』と思って、ネタロマン系のアイテムばっかりつくっちまった……)
そこで、センは、さっそく、エグゾギアを再起動させるためのエネルギーチャージをはじめるが、
(……このペースだと、明後日までにフルチャージは無理だ。つぅか、フルチャージってなると、最低でも数週間は必要……ど、どうする……存在値一兆という『ニーの50000倍強い敵』を……毘沙門天もエグゾギアも使えない状態で、俺はどうやって倒す……考えろ……どうする……)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます