17話 勘違いしないでよねっ。
17話 勘違いしないでよねっ。
(……それに……)
センは、頭の中で、多くの事を考えた。
『存在値1兆の敵』を殺そうとすると、
『命がけの死闘』になることは明白。
(最悪でも相討ちにはもっていく……死んでも守ってやる……)
その『覚悟』を決めているセンは、
(俺の死を、こいつが悲しむかどうかは知らん。こんだけ『クズい性格』をしているから、なんとも思わない可能性もゼロじゃない。けど、『俺の死』を、こいつが、『その後の人生の重荷』にしてしまう可能性もゼロじゃない以上……)
もし、『シューリを守るためにセンが死んだ』という事実を知った時にシューリがどう思うか。
そんなことまで考えた上で、
センは、
「……『世界を滅ぼす1兆の敵』なんて、最高の獲物だ。ソレを倒せば、俺は、名実ともに『最強のヒーロー』になれる。だから、あんたが死んで、存在値1兆の敵と戦う機会がなくなると困るんだよ。そんだけ」
「……」
「なんだよ。なんか言いたそうな顔だな」
そこで、シューリは目を閉じて、
ゆっくりと、数秒の時間を使ってから、
「言っておきまちゅけど、オイちゃんは、あんたの毒親に、ついイラっとしただけで、あんたを助けようとしたワケじゃないでちゅよ。勘違いしないでくだちゃい」
などと、そんなことを口にして、プイとソッポを向いてしまった。
その横顔を見て、センは、
「……俺のこと、おぼえてんじゃねぇか」
ボソっとそうつぶやいた。
★
――ここは、ヤオヨロズの迷宮。
最奥に、『存在値1兆の敵が出てくる扉』が設置されている世界最強のダンジョン。
あの後、センたちは、軽く話し合い、
『とりあえず、どんな扉なのか見ておこう』
という結論になって、今に至る。
ヤオヨロズの迷宮は、『誰も踏破できないダンジョン』と言われているだけあって、とんでもないモンスターが目白押しだった。
存在値にして300~500という、
皇帝級の力を持つ化け物がうようよしていた。
――ただ、現在、ヤオヨロズの迷宮に挑戦中のパーティは、
『存在値999』と『存在値1200』と『存在値17万』という、ぶっ壊れスーパースリーピースなので、特に誰かがケガをおうこともなく、スルスルと先に進んでいけている。
途中で、センが、周囲を観察しながら、
(ところどころ、『最近、戦闘があったような痕跡』が残っているな……誰か挑戦したのか?)
などと、思っていると、そこで、
アダムが、センに、
「ワナが少々面倒くさいのと、次元ロックがかかっていて瞬間移動できないっていう、二つの鬱陶しいポイントを無視すれば、あとは、モンスターのレベルが高いだけの、いたって普通のダンジョンですね、主上様」
「……まあ、そうだけど……その主上様っていう呼び方、やめない? むずがゆいんだけど。センでいい」
アダムは、『敬虔(けいけん)な信者』でありながら、しかし、『死ぬほど頑固でワガママ』という性質も持ち合わせている『厄介オタクの極み』みたいな美少女。
彼女は『センの望みを盲目的に叶える』ということはしない。
あくまでも『自分がやりたいセンへの奉仕』をガムシャラに執行(しっこう)するだけ。
(……『きつめの美人なところ』とか、『根性があって努力ができるところ』とか、そういうのは、まあ、タイプっちゃタイプなんだけど……この猪突猛進でメンヘラなところは、普通にダルいな……)
などと思いつつ、センは、シューリにも視線を向けて、
(シューリもシューリで、性格が終わっているし。……てか、シューリに関しては、本当に、性根が腐っているとしか言いようがない。過去のアレコレがなかったら、俺、絶対、こいつとは関わり合いになっていない。……んー……美人ってのは、どうしても、頭がおかしくなってしまうものなのか? どうせ、パーティを組むなら、俺、もっと、普通のカワイイ性格の子がよかったなぁ……)
などと、心の中でグチっている間に、
センは迷宮を踏破してしまった。
めちゃくちゃ広い迷宮だったので、
最奥までくるのに、けっきょく、丸一日近くかかってしまった。
ただ、ここにいるのは、全員、破格の超人なので、誰一人、息の一つもきれていない。
荘厳な階段を下りて、
最奥に辿り着くと、
――そこには……
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